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グラディエイター
官能リレー小説 - ファンタジー系

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グラディエイター 24

「はっ、エリダヌス、オルターク共に大きな動きはありませんが、両国共に国境付近に新型機の配備が進んでおります」
エルドアンの報告にクリスは少し唇を噛む。
ついこの前、父の名代でオルタークの閲兵式に参加したばかりだったが、そこでオルタークの新型機を見てきたばかりだった。
シャール・ド・マーニュ…
オルタークの誇る重装操機兵、ド・マーニュを全面改良した操機兵。
グラーナでは『デカブツ』と呼ばれた機体は、高出力、高装甲だが鈍重と言うイメージがあった。

機体数を制限して高性能機を用いるエース主義の公国にとっては手強い相手であるが、出力にそう差がなく機動力においてはかなりの差があったので対処はできた。
だが、新型のシャールは重装甲はそのままに、機動力が大幅に向上し、ゲシュパルトにも辛い相手に仕上がっていた。
共和国議長の得意満面のしたり顔を、クリスは苦々しく見た記憶があった。

これもそれもエリダヌスが開発した新型機の為だった。
数年前、エリダヌスで投入された新型機は大陸中の度肝を抜いた。

ヴァイン…
一回り小さなその機体は、機動性、俊敏性、操作性に優れ、エリダヌス特有の優秀な感応晶を組み込み効率的な集団戦法を可能にした。
また、各国平均を大きく下回る製作費で大量生産を可能にし、各国のパワーバランスを大きく揺るがした。
そのヴァインが、『小さな巨人』の異名で呼ばれるまで、さして時間はかからなかった。

そして、ヴァインの登場が各国の操機兵生産競争を激化させ、近年次々と新型機が投入されてきた。
それにはグラーナ公国も無縁ではいられなかったのだ。

名機ゲシュパルトにより優位を保っていたバランスは、少しずつ崩れようとしている。
グラーナ大公は数年前から新型機プロジェクトを始め、ようやく試作機までこぎ着けた所だった。
だが、同時に高出力時代の到来は、動力源である妊兵に更なる負担を強いるものだった。
近親相姦の禁忌を犯し、他国以上の高出力機を運用していた公国でさえ、未知の領域と言っていい。
しかし、国の規模の問題で、エリダヌスのような量産機を大量に用いる事もできなかった。
仕方無いのはクリスも解っている。
だが、やるせない気持ちは消せなかった。

むしろモヤモヤした気持ちが、さらに重苦しくなってクリスの心にたまっていた。
報告を聞く限り、他国の動きはちょっとした挑発や示威行為程度のものだろう。
だがあまり無視しているようではなめられるし、下手をするとそのまま戦争に突入ということにもなりかねない。
かと言ってそれには自分たちの出撃や、新規の機士の徴兵が欠かせない。
最愛の妹たちを苦しめ、同じ苦しみを再び民に強いなければならない自分の不明に、クリスはますます気分が重くなっていくばかりであった。

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