元隷属の大魔導師 64
局の出入り口に立つ、日直の騎士に片手を上げ、挨拶をしながらデルマーノは門をくぐった。
アリアもそれに続こうとしたが守衛の騎士達の目の前でイチャついていた男女に対する特有の冷やかしの視線が気恥ずかしく、顔をあげることができない。
デルマーノの背を追って歩いていると局舎の入り口を通り過ぎ、馬屋まで来てしまった。
「……デルマーノ?」
不審に思い、問いかけるがデルマーノは空を見つめたままである。
「………っ!おおっ。来た、来た!」
その声にアリアはデルマーノが見る方へ視線を送ると、黒い影が目に入った。
豆粒程度であった影は次第に近付き、大きくなる事で輪郭をアリアに視認させた。
「あれは……アルゴ?」
ぐんぐん、と高度を下げ、近付いてくる黒竜。
デルマーノの頭上へと来ると、ゆっくりと着陸した。
その背には一人の青年が乗っている。
「ヘルシオ君……」
「どうも。デルマーノさん、アリアさん。おはようございます」
ヘルシオは丁寧に頭を下げると、アルゴから降りた。
「今日は初入局だからな。迷わねぇようにアルゴへ乗せたんだ」
確かにこの辺りには似たような局舎が何局もある。初めて来た人間は迷ってしまうだろう。
しかも、書類上は一月前に入局している事になっている。大っぴらに案内する事も出来ないのだ。
「ヘルシオ……そうだな、俺達の詰め所と鍛練場、それと食堂だけ教えといてやる。後は自力で覚えろ。行くぞ?」
デルマーノはそう言うと局舎へと向かい歩いていった。
アリアとヘルシオは慌てて、後を追う。
デルマーノは結構、足が速いのだ。
「アリア……朝帰り、お疲れ様〜♪」
フローラはニヤニヤとアリアに肩を組み、言った。
「あの後、デートして……ぽっ♪」
「もうっ、からかわないでよっ」
実際、フローラの想像通りな事をしていただけに恥ずかしさも普段とは比べ物にならない。
「ふっふっふっ……顔、真っ赤にしちゃって……可愛いんだから」
ツンツン、とアリアの頬を人差し指で突くフローラ。
「うぅ……遊んでる暇はないでしょ?早く、訓練に行かなきゃ」
「分かってるわよ……私だって隊長に怒られたくはないからね」
他愛ない話しをしならがら二人は近衛騎士局の局舎、一階にある鍛練場へとついた。
出入り口に人垣が出来ている。
そんな光景は入局して以来、一度も見たことがなかったため、アリアは首を傾げた。
「………どうしたんだろ?」
フローラも同じ疑問を口にする。
人垣をかき分け、最前列へ行くと………
……バンッ…
…キッ……
………ドコッ!…
ズサアァァ……
鍛練場の中心で二人の青年が木刀を片手に模擬戦を行っていた。
二人ともアリアのよく知る人物である。
「……デルマーノ君とヘルシオ君?」
後から来たフローラが二人の名を呼んだ。
そう、模擬戦を行っていたのはデルマーノとヘルシオであった。
見るとヘルシオが一方的に押されている。