元隷属の大魔導師 49
女王付き近衛騎士隊々長ヨーゼフに案内されシンシア、ユーノ、リリア、エーデル、デルマーノの五人は謁見室へと通された。
ヘルシオは非公式の存在の為、外で待機している。
謁見室に入ると女王セライナと三人の王女達、そして宰相トードレルが所定の位置へ座っていた。
セライナは立ち上がるとシンシアへと向かい、ゆっくりと歩いていく。
姉妹は服を同じ物にすれば判別が出来ないであろう、と思うほど酷似していた。
「………シンシア、よく無事で…」
「姉上……」
二人は互いの存在を確かめるかの様に強く、抱き合う。
数十秒に渡り、抱き合うと二人は自身の娘を紹介し合った。
一通りの挨拶が済むと、漸くセライナはデルマーノとエーデルに意識を向ける。
「大儀な任務、ご苦労であった。礼を言う」
「「はっ……有り難き幸せ」」
「特にデルマーノ……貴公はカルタラの外での任務は初めてであったな。難儀であっただろう?」
「……微力の限りを尽くしました」
「そうか……ノーク殿から報告は聞いてある。臨機応変の働き、誉めて遣わす」
「身に余る光栄、感激であります」
「うむ……では退室して良いぞ。存分に休め」
「「失礼します」」
二人は謁見室を出ると隊が待機する局へと向かった。
「デルマーノ隊長……本当にご苦労様でした」
「エーデル隊長こそ……」
「いいえ、貴方がいなければ無事にシンシア様達をお連れ出来たかどうか……」
「ありがとうございます」
門番に会釈をしながら王城を出て、近衛騎士局のある左へと二人は曲がる。
「そう言えば………デルマーノ隊長はアリアさんと、その…お付き合いされているのでしょうか?」
「はい……一応、私はそのつもりですが…」
「そうですか。いえ、私は男女の機微には疎いもので…」
エーデルは頬を朱に染め、頭を掻いた。
「その所為もあって、半年前に婚約破棄されましたから……」
「ほぅ………では今はお付き合いしている男性はいない、と?」
「ええ」
「それは、まぁ…勿体無い」
「………は?」
エーデルはデルマーノを見て、何度か瞬きをする。
普段の彼の口からは決して漏れないような単語であったからだ。
素を垣間見せたのはやはり、デルマーノが疲れ、油断していたためであろう。
「………失礼。失言でした」
話しも途切れ、無言のまま二人は歩き、間もなく近衛騎士局の入り口へと着いた。
近衛魔導隊詰め所へ向かうデルマーノはエーデルに別れを告げ、二階へと階段を登って行く。
その背中をエーデルは暫く、見つめていた。
デルマーノはガチャッ、と鉄製のノブを捻り、近衛魔導隊詰め所へ入った。
「っ?………ジジイ」
「ふむ……帰ったか。早かったな」
気配の無い室内に人がいた事にデルマーノは驚いたが、それが師であると分かり、その名を呼ぶ。
部屋の中央にある円卓を挟む様に置かれたソファーに座ったノークが片手を上げ、応えた。
「………近衛騎士局まで来るたぁご苦労な事だが……一体、何の用だ?」