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元隷属の大魔導師
官能リレー小説 - ファンタジー系

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元隷属の大魔導師 48

んで、ゴーレムを創る要領で死体を細工する。
そしたら元からあった傷を魔術で吹っ飛ばして隠せば、ヒルツ皇子の死体の出来上がり♪ってな)

後はヒルツの死体と偽って、クレディア軍に引き渡す。
それがデルマーノが描いた計画であった。

……
………
…………

『デルマーノ……ヒルツはな…本当ならば健康な兄が二人もいた為、この国の治世に生涯、関わる事はなかった筈なのだ。だから、いきなり第一皇子として国と共にしろと、他でもない余に言われ、荒れている。しかし、しかしだ………』

ゼノビスV世はそう言うと月を見上げる。
彼の潤んだ眼は青い月光を滲ませた。

『それは……ターセル皇ゼノビスとしての答えだ。父親としてのゼノビスは何としてもヒルツを助けたい、と思っている』

『心中……お察しします。故に私に声をお掛けになった、と?』

『うむ。貴公の言った、助かるとは、つまり……』

『はい。私の策ではヒルツ皇子には死んで頂き、一市民ヒルツとして生きていく事になります』

『………可能、なのか?』

『シュナイツへ亡命した後は近衛魔導隊に入隊…つまり、私の直属の部下という席を用意させます』

デルマーノは手の平に収まる大きさの鳥形ゴーレムをゼノビスに見せ、言う。

『勿論、入隊日は本日より遡り一月……私と同じ日になるよう細工します。事実を知る者以外は誰もヒルツ皇子だとは思わないでしょう』

『そうか……唯一の心残りはヒルツに…いや、子供達に将来を約束出来ぬ事だが……仕方あるまい』

『しかし、シュナイツ王国一同、皆で姫様を見守ることは約束します。また、ヒルツ皇子も私が命に代えてでも支える所存であります』

デルマーノは魔導師が取る最上級の礼をゼノビスへとした。

彼がここまでに礼を尽くすのはゼノビスが皇という仮面を外し、一人の父親として乞うた事に敬意を払ったからである。

『いや、余の方こそ……礼を言う』

ゼノビスは王冠を取ると、頭を下げた。
これは皇が同等かそれ以上の身分の者にのみ取る礼である。

『余の最期に……貴公に出会えた事、向こうに逝ったら神に礼を言っておこう』

そう言い、一頻り笑うとゼノビスは身嗜みを整え、城へと去っていった。


…………
………
……

「……ルマーノ、ねぇ……どうしたの?」

アリアは心配そうにデルマーノの顔を覗く。
彼はターセルの方向を向き、呆けていたからだ。

「ああ、平気だ。只、世の中にゃ面白い王様もいたんだなってな」

「それは……ゼノビス閣下の事?」

「…………」

デルマーノは何も言わずに、ターセルへ一度、深く礼をした。
アリアは彼らしくない行動に驚きながらも、馬を降り、倣う。

「………さぁ〜て、帰るか?」

「ええ♪」

敗国からの帰還ながらも、二人の足取りは軽かった。




更に五日を掛けて一行はディーネへと辿り着いた。

女王の妹や姪の入城の為、武官、文官一同での出迎えである。

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