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元隷属の大魔導師
官能リレー小説 - ファンタジー系

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元隷属の大魔導師 290

と、愚痴ってみたところで、解決策をこの邪竜が教えてくれるはずもなく――知能は高いらしいが、人語を解すまでにはまたまだ成長しなければならないらしい――、だったら、口に出すことになんの意味もない。

でも、きっと、魔術だ。

世の中は広い。自分の知識の外にある術があったって不思議でもなんでもないのである。

しかし、とどのつまり、魔術なのだ。

「んっふっふっ〜……おっとなしく隠れていれば、まっ、死ななくてすんだのにねぇ〜」

シャーロットは口を三日月に歪ませた。
その時だ、また、魔法の狙撃をアルゴが察知した。

「いい加減にい〜〜っ」

シャーロットはアルゴの飛翔の衝撃に堪えようとはせずに、そのため、その矮躯は簡単に空へと投げ出されてしまった。
けれど、そんな少女の瞳には焦りの色はなく、冷静に、冷徹な、鉛の冷たさで大地を睨んでいる。
魔術師にしか、いや、高位の魔導師にしか捉えようのない魔力の集束が、全貌を納めるシャーロットの双眸にはありありと見受けられた。

「しぃ〜〜ろおぉっっ!」

その方へと左手を突き出すと、精密さの欠片もない、乱暴な集中で魔力を術式に乗せ、物理力へと変換させた。
余りあるほど大魔力による雷の波がシャーロットの指し示した一点から急速に拡大していく。
大気は鳴き、大地は震えた。
樹林の内に降り積もっていた雪が粉となって舞い上がり、シャーロットの視界は妨げる。
けれども、結果などは見るまでもないのだ。

「最強の美少女吸血鬼、参上っ!……なんてね」

再び重力に引かれて白銀の世界を作り出した粉雪の狭間からうっすらの垣間見れた魔術の爆心点。
薙倒れた大樹や深々と穿たれた大地を目の端にシャーロットは王都内へと帰還を果たしたのだった。

「ん〜っ……さっすがに無茶しすぎた?こりゃ、お兄ちゃんがうるさそうだな〜と……」

矮躯を精一杯伸ばし、背を正すシャーロット。
どういうつもりなのか、未だにウェンディ王都の最外城壁――城下町をも囲む長大なソレの門は開かれていない。
この国はすでにクレディア側に着いているということは明々白々なのに……。
こんな有事だ、人気のない王都の主道の真ん中でアルゴから降りたシャーロットはその道の果て、雪原を走る街道へと繋がっている城門を遠くに眺め、首を傾げてみた。
けれども、その答えはすぐにわかった。

「んふっ。にゃっるほどねぇ〜。あからさまにはしたくない。けれど、クレディアとかいう国の間者――ってのは変な表現かな?まぁ、その主戦力とやらは既に手元にあるってわけかあ」

シャーロットは無邪気に笑い、冷静に分析する。
けれども、彼女が目にしたのは民か衛兵か、少なくとも貴族の末席にも名を連ねていないだろう、そんな簡素な服装をした十名余りの亡骸であった。
主道を避けるように家々の合間へ放り捨てられた死体は、まだまだ生命の残滓を残しており、五歩は離れているシャーロットの鼻にも生臭い鉄の香りが届いてきている。

「殺されちゃって四半日ってとこかな……うん、見事な太刀筋だね、天晴れだ」

今日は有事ということもあり、グローブをしていないのだ。
手を汚したくないシャーロットは爪先で数体の遺体を転がし、検分する。

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