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元隷属の大魔導師
官能リレー小説 - ファンタジー系

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元隷属の大魔導師 263

けれど――、とアリアは思う。

(悪いこと……って言っても、あとでデルマーノにおぶられたって知れば、ジルなら逆に喜ぶとおもうけどね)

寝息を立てるジルの幸せそうな表情も、見間違いではないはずだ。

――少しだけ、アリアは嫉妬を覚える。……少しだけだ。

こちらは、常に幸せそうなシャーロットも寝具にくるませると、アリアはデルマーノの手を取った、

「んぉ?」

「その、ね?……ちょっと、出ない?散歩でも……」

だが、取ったはいいが、言葉に詰まってしまうアリア。
しどろもどろと、適当な言葉を並べる。
すると、デルマーノはやけに素直に頷いた。

「ちょうど、いい……な。俺も、アリアに見せたいもんがあるんだ。大層なもんでもねぇが、んま、けじめ――みたいなこったな」

「えっ」

「ホレ、行くぞ?この吸血鬼共、案外、寝つきがわりぃんだ。元々が夜行性だったからな」

そこまで言うと、デルマーノは音を立てぬように慎重に、ゆっくりと扉を開け、アリアを導いた。




一度、室内に馴れた身としては、外は肌寒かった。

「しゅんっ――」

アリアは凍えるように、その騎士としては細い肩を抱き寄せた。
すると、スッとデルマーノが、自身の羽織る宮廷魔導師の外套を一度、大きくはためかせるとその中へアリアの身を抱き寄せた。
カルタラ同盟国家群、盟主国の最高機関の一つである宮廷魔導師の外套だ、防寒能力に長けていた。
――もちろん、この温かさの要因はそれだけではないのだが。

「ふふっ」

「ん?」

「なんか、さしぶりの感じよね。こういうふたりきりで、なんにも考えないでゆったりとするのってさ」

「そうか?ちょくちょく、あったような気もすんがな?」

「……初めて、ディーネの街を歩いたときみたいじゃない?」


(そういえば、あの時も奴隷街で抱きしめられたっけ……)

彼を絶対に意識した瞬間を思い出し、アリアは頬を綻ばせた。
それはデルマーノも同じだったようで、小さく犬歯をむき出させて笑っている。

「…………そうだな。たまには、いい」

「でしょ?」

「イヒッ……」

最近、また、少しだけ伸ばしはじめた赤色の髪――肩胛骨の辺りで一つに纏めたお気に入りのソレをデルマーノが優しく梳いてくる。
アリアは、彼のこの仕草が好きだった。
誤解を覚悟で言えば、彼のモノなったような気がし、嬉しいのである。
たった一年にも満たない間に自分は変わった。
周囲が変わった。
そして、少しでもデルマーノが変わってくれたのならば、自分はそれで満足である。
恋人の腕に抱かれ、アリアは、ふとそんなことを思った。




荒ら屋――少なくとも、アリアの価値観では、間違いなく荒ら屋に分類される家屋が建ち並ぶ通りを真っ直ぐ北へと進むと、ウェンディの街外れへ行き当たった。
そこでは大小様々な岩石が乱立していた。
それらが自然力ではなく、人の手で加工されたことがわかるのは、隆起したにしては明らかに数が多かったからだ。

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