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元隷属の大魔導師
官能リレー小説 - ファンタジー系

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元隷属の大魔導師 261

そも、デルマーノとは面識のない少年たちだったが、それでも、元隷属出身という仲間意識は強いようで、すでに打ち解ける――そんな言葉では生ぬるいほどの親交を築いている。

楽しそうに笑うデルマーノ。

一抹の寂しさを、アリアは覚えた。

「アリアは、残ってよかったの?」

マリエルが訊ねてきた。
というのも、ヘルシオとフローラは酒宴の半ばほどで席を外し、帰城したのである。

「えっ?……まあ、私が帰っても何かが変わるというわけではありませんし――」

「婚約者としては、あの吸血鬼たちだけを残すのは不安?」

マリエルがデルマーノとその相手へと酌するエルフの吸血鬼と、先ほどまでは皿に盛られた肉類に文句を言いつつもパクついていた、現在は部屋に唯一残った家具である簡易ベッドで寝息を立てる幼女然とした吸血鬼とを視線で示し、悪戯っぽく微笑んできた。

「……――まあ、そんなところです」

アリアは、自身でも曖昧だと思う、中途半端な返事を返した。
確かに、シャーロットたちだけをデルマーノの下に置いてウェンディ王城ケルヘルゴードに帰還する気には、到底、なれるものではない。
しかし、ソレとは別に、気になることがある。
復活した途端、デルマーノへオイオイ泣きついたマルスランが――では、もちろん、ない。

彼の母親について、情報が少なすぎるのだ。
知っていることはわずかである。
デルマーノが四歳過ぎの頃には亡くなっていた。
それまでは、女手一つで彼を育てていた。
そういえば、奴隷娼館で働いていた――と、含みをもたせてデルマーノが、以前、言っていた。

まあ、それくらいしか、アリアは知らない。

ただ、その程度で気になるほど、アリアは神経質ても、知りたがり屋でもなかった。
本当に気になっているのは、彼の背中の傷跡だ。
ワータナー諸島王国で、「いつか話す」とデルマーノ自身が言っていたが、気になってしまうものは仕方がない。
いまはもう、目を凝らしたって見えるかどうか――その程度の十字傷。
中には聖具が埋め込められているのだと、シャーロットから聞き及んでいた。
その聖なる力の前に、彼女の闇系統の儀式魔法が反転させられてしまったのだという。

――よくはわからないが、ただの聖具ではない、と吸血鬼の少女は言っていた。

ならば、なぜ、そんなものが彼の背中に埋まっているのだろう?
デルマーノは「血と魂の罰」と言っていた。
といことは、十中八九、血と魂をわけた母親が関係しているのだろうが……。

「……お〜い、アリアさ〜ん?」

「っ――」

いつの間にか、自分の世界に倒錯してしまっていたようだ。
声がかけられるまで、すぐ隣の修道女の存在を忘れてしまっていた。

(まったく。わたしはなにをやっているのよ?)

心の中で自嘲するとアリアは、マリエルへと首をかしげた。

「なんです?」

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