PiPi's World 投稿小説

元隷属の大魔導師
官能リレー小説 - ファンタジー系

の最初へ
 246
 248
の最後へ

元隷属の大魔導師 248

「だから、絡んでいるのよっ!それはもうっ、チンピラ顔負けの若い奴らを集めてっ!」

「いや、だからよ。それがどうしたってんだ?」

「ああっ、もう!シュナイツの紋章を付けた魔導師やら女騎士やらに絡んでるっていってんのっ!デルマーノの知り合いでしょっ!」

「――ッ!それを早く言えっ!」

デルマーノはマリエルに叫んだ。
と、同時にすでに立ち上がり、転げるように駆け出していた。




「……えっ、と……なに、これ?」

フローラのどこか惚けたような呟きが妙に耳へしっくりときた。
アリアは溜め息をつく。
目の前には二十余名の男たち。それぞれが棍棒や手製の槍といった武器を手に、清潔とは言い難い服を纏って、ニタニタと笑っていた。
ほとんどの者が十五を過ぎたくらいだろう、少年だ。
しかし、そのリーダー格だろう、自分たちと向かい合う格好で立つふたりの男だけは異色だった。
ひとりは天を突くような巨躯の男。シャーロットの二倍近くの身長を誇るその四肢を動物的な筋肉に包んでいた。
右手には戦鎚。所々に付いたビスは錆ではないモノで黒ずんでいる。
若草色の頭髪を短く、刈りそろえていた。頬骨が張り、武骨な顔付きだ。
しかし、その風体とは裏腹に物静かに佇んでおり、それがまた威圧感を生んでいた。
というのも、デルマーノやエーデルにも通ずる、強者の覇気というものを発散させているのだ。
そして、その強者の覇気をもうひとりの男も、巨漢よりもさらに濃密で明確に発していた。
麦穂のような黄金色の頭髪を首の後ろで一つにした若者だ。巨漢の男よりもわずかばかり、年長だろう。
面長には血の気のない酷薄そうな唇と切れ長の双眸が埋め込まれており、アリアよりも首一つほど背が高い。
男は抱えるほどの岩に腰掛け、黙々と読書に励んでいる。
しかし、思い出したかのように首を回し、アリアたちへと視線を向けてきた。
爬虫類のようで、猛禽のようで、月のない夜のような眼差しだ。
デルマーノや、ディーネの貧民街の党首ラインバルトの持っていた瞳だ。

「――神は、人も亜人も、それこそ魔の者たちもすべてに同等にて至高の愛を与えた、と教典には記されている。己や、己の兄弟たちもある修道女からそう教わった。己も確かにそう思う。この世には醜美、強弱にかかわらず、総じて生きているモノがいる」

なんの話しだ?
アリアは鼻白む。ただ、その修道女に心当たりはあった。
――ソフィーナ。
『紫水晶』の娘にして、短命の、おそらくは聖女のような女性。
デルマーノを変えた女性だ。
そして、きっと、デルマーノが初めて愛した女性。

「生きとし生きるモノ、みな、素晴らしい――己や、己の妹分はコイツらにそう教えている。
生への感謝。死への覚悟。愛への理解。自然への畏怖。
そういったことをだ。己は人道を、妹は神道を用いてな。しかし、それでも赦せない輩がいる。忘れてはならない罪がある」

「――この国の、そしてカルタラの地に住まう貴族と王族と万民の罪……」

「ッ!」

SNSでこの小説を紹介

ファンタジー系の他のリレー小説

こちらから小説を探す