PiPi's World 投稿小説

元隷属の大魔導師
官能リレー小説 - ファンタジー系

の最初へ
 224
 226
の最後へ

元隷属の大魔導師 226

アリアはまじまじと愛しき魔導師の顔を見つめると大きく頷いた。
前に別れたときのような切羽詰まった雰囲気はなかったからだ。
きっと、師匠――ノークに一発、貰ったからだろう。
他人に殴られるのは当然、気分の良いモノではないが、ただ、そこから人の心を察することができる。
自分も昔、一度だけ父に殴られたことがあったが、結構、スッキリするものだ。
デルマーノも存外――子供っぽい。

「……ふふっ」

「……?なんだ?」

「いや、ね。デルマーノもまだまだ、若いなぁ、てね」

「それは……ガキのようだと?」

「ま、ままさか……」

「ヒヒッ……分かりやすい女だな、アリア。イヒッ、ヒッヒッ――」

デルマーノは口を大きく開けて笑った。
アリアは、むぅ、と唇を尖らせてみたが、伸ばされた右手に髪を梳かれた途端、どうでもよくなってしまう。
壁に手を付いて立ち上がるとデルマーノは床を踏みしめるようにして数歩、進んだ。

「んま、行くか?さっき言った穴場の店にでもな?」

「でも、大丈夫?もう、結構に呑んでるんでしょ?」

アリアは心配顔で問う。
局の食堂で別れてすぐにデルマーノが飲み始めたなら、かなりの時間が経っている。
これで、さらに酒場に連れて行ってよいものなのだろうか?

「ヒヒッ……安心しろ。まだ、一本ちょっとしか呑んでねぇからよ」

「い、一本っ?葡萄酒だって、そんなに呑んだら酔わないはずがないわっ!」

「葡萄酒?俺が呑んでたのはトウモロコシの蒸留酒だが?」

「――ッ!」

アリアは絶句した。
最近、巷で大麦の代わりにトウモロコシを使った、焼いた樽詰めの蒸留酒が流行っていることは知っている。
しかし、その酒の半分は酒気だと言われるほど強い酒なのだ。

――それを、一本ちょっと?

本当に大丈夫だろうか?



アリアの心配をよそにデルマーノはしっかりとした足取りで繁華街を歩んでいく。
シュナイツ王都ディーネのメインストリートとはいえ、そんなに距離があるわけでもないし、店だって種類によって区画されていた。
そのため、デルマーノの言う『穴場』にはすぐに辿り着くことができた。
路地に面したそこは一見、ただの店の裏だ。
しかし、デルマーノがその煉瓦塀の赤煉瓦の内、数個を押すとズズズ……、と音を立てて沈んだ。
素直に驚くアリアへデルマーノは「イヒヒ」と悪戯っぽく笑うと、再度、煉瓦塀を押した。

――ギィイィィ

クルリと煉瓦塀が九十度、反転し、その隙間に空間が出来ていた。
人が一人、なんとか通れるか、という大きさだ。
アリアは目をパチパチとさせ、そして、辺りをはばかるように言った。

「あの、まさか……そこが、ってわけじゃ……」

「ん?そうだ。ここが、な。もともと、盗賊ギルドの隠れ家だったんだ。だが、そのギルドマスターが代を譲るのに合わせてギルドは別の場所に移して、ここを回収したんだとよ。んまぁ、そのギルドマスターが隷属の出身者でな……」

「ねぇ、まさか……売り上げが盗賊ギルドに流れてるってことは……」

SNSでこの小説を紹介

ファンタジー系の他のリレー小説

こちらから小説を探す