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元隷属の大魔導師
官能リレー小説 - ファンタジー系

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元隷属の大魔導師 218

まぁ、同じ家に住んでいるのだから……、とヘルシオだけのときは言えた。
だが、世間知らずの吸血鬼、シャーロットが一緒だと考えると話しは別だ。
一刻も早く、遠征があることを教え、できる限りの一般教養を教えこまなければならなかった。

――シャーロットにはひと月ほど前、隣国バイランドリアの一級文官にタメ口を叩いた前科がある。
あの時は運良く、温厚な方で笑って許してくれから良かったものの……下手したら国際問題になっていた。

背中に嫌な汗を感じたアリアはブルブルと震えた。

「それで、どうしましょう?」

「ど、どうするもこうするも……知らせに行きましょう。すぐに!」

「ア、アリアさん?」

「幸運は二度も続きません。シャーロットには徹底的に常識というものを教え込みましょうっ!」

「……まぁ、そうですね。では、行きましょうか?」

「はいっ!」

アリアは大きく頷いた。
最近、デルマーノだけでなく、彼女の中でもシャーロットは手のかかる妹のような存在になりつつある。
だから、近衛魔導隊の待機室へと向かうのだ。

――決して、デルマーノを追うのが怖いわけでも、ない。

そう、アリアは自身に言い聞かせた。




「――――わぁっ!」

「きゃっ……もぅ、フローラ。どういうつもりよ?」

アリアは背後から突如、声をかけてきた親友の女騎士へ非難の眼差しを向けた。
フローラはグイッとアリアの肩へと腕を回すと引き寄せ、言う。

「ははっ――それだけ怒れれば充分ね」

「……そんなに険しい顔をしてた、私?」

「うん。めっちゃ、ね」

「…………ありがと、フローラ」

「どーも」

そう言うとアリアとフローラは同時に吹きだした。
現在、二人がいるのはシュナイツ王都ディーネの飲食街である。
日も暮れ、店々には灯りがともっていた。
アリアはついさっきまで近衛局の近衛魔導隊待機室でシャーロットを教育していた。
エーデルと一緒に、だ。
これがまた、手間がかかった。
シャーロットは二言目には「えっ?なんで?」と聞き返してくるからだ。
しかも、その質問内容は無邪気で、汚れた大人――シャーロットと話しているとそんな気になってしまうのだ――には、論破することができない。
それでも、なんとか一通り教え込むと、そこにフローラがやってきた。
アリアはヘルシオを誘いにきたものだと思っていたが、なんとフローラは自分を呑みに誘った。
いま、思うとその時から深刻な顔をしてしまっていたのかもしれない。
十年来の親友の目は誤魔化せなかったということだ。
恋人との晩餐を中止にしてしまったフローラに罪悪感を覚えたアリアは一頻り笑うと謝った。

「ごめん、フローラ。ヘルシオ君とのデートを邪魔しちゃって……」

「へ?いいよ、いいよ。別に今日だけじゃないしさ、ヘルシオ君と出掛けるのは」

「でも……」

「こら、アリア。親友に気を使うなっ。今日は女二人で飲み明かそー!このフローラがなんだって悩みを聞いてあげちゃう。解決してはあげれないけどねぇ〜」

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