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元隷属の大魔導師
官能リレー小説 - ファンタジー系

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元隷属の大魔導師 200

頭上から注がれた不機嫌な女の声にシャーロットは手を止め、デルマーノは見上げた。
そこには第一王女付き近衛騎士アリア・アルマニエが立っていた。
逆光のために表情は読めなかったが、おそらく機嫌良くはないだろう。

「よう。昼飯か?」

「……んもうっ。貴方たちは普通に船旅を楽しんでるのね。少しは周りの人にも気を使ったら?」

アリアはしゃがむと唇を尖らせてデルマーノをにらんだが、諦めたように、ふと顔を綻ばせた。
ここ数日間、この主従を観察してアリアはある程度、二人の関係を容認しつつある。
肉体関係を持ってしまったとはいえ、デルマーノとシャーロットは仲の良い兄妹のように接し合うからである。
デルマーノが密かに子供好きであることをアリアは知っていたし、シャーロットもその呼び方通り「お兄ちゃん」なのだ。
まるで、この二人は互いに欠けていたモノを補い合っている印象を受けるアリアには大声でただ、非難するのも気が引けた。
だが、それでも、当然ながら釈然としないものがあるのは確かだ。
だから、容認し『つつ』なのであった。

「周りの人だぁ?別に俺たちゃ立ち入り禁止の札なんぞ、掲げちゃねぇがな?」

「立ち入り禁止って…………もしかして、気付いてたのっ?」

アリアはシャーロットを俵抱きして起き上がったデルマーノへ驚愕の視線を送る。
すると、その黒髪の若き魔導師は「イヒッ」と肯定の笑みを浮かべた。
アリアが言っているのは、ここ――つまり、『海原を翔るイルカ』号の後方甲板がデルマーノとシャーロットの私有地化していることである。
もちろん、デルマーノが言うように彼らが占拠しているわけではない。
それどころか、生徒たちに船内で遭遇し、怯えさせないよう気を使った結果であった。
つまり、真血種の吸血鬼やそれを使役する魔導師が常に同じ場所にいることで生徒たちに避けさせ、鉢合わせないようにしているのだ。
アリアはデルマーノが意識的にこの場に居座っていることを悟り、小さく笑った。
実に彼らしい気の使い方である。

「なら……なにも言えないわね」

「ヒヒッ……んまぁ、生徒共がクソガキにビクつくのもあと、二、三日さ。それまでは我慢してもらいてぇな」

「ふふっ。ええ、そうね」

デルマーノは甲板に積まれた木箱に腰掛け、アリアもそのすぐ横に座る。
木箱と言っても大きいモノではない。
そのため、二人は寄り添うような格好になった。
アリアは隣に座る元隷属の魔導師の肩に頭を乗せ、再び、小さな笑いをその魅惑的な唇の間から漏らした。

「…………私、お邪魔?」

そんな桃色の雰囲気に包まれた二人をみつめ、シャーロットはぼそりと訊ねる。

「いんや、別に。ほれ、シャーロット……暇なら歌でも歌っとけ?」

デルマーノは問いかける吸血鬼の少女の方を見もしないで、本を再度、読み始めるとヒラヒラと空いた手を振って言った。

「むぅ〜……普通に邪魔と言われるよりも悔しいよォ」

「……?」

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