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元隷属の大魔導師
官能リレー小説 - ファンタジー系

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元隷属の大魔導師 187

いまや従者となった二人の吸血鬼が頭を下げるを見たデルマーノはもし、この二人を連れて行ったとしたら――と想像してみた。

「…………はぁ」

デルマーノは眉を潜めて呻いた。
ウルスラやフローラになんとからかわれるか分からないし、エーデルや最近、生意気になってきたヘルシオは小言を言ってくることだろう。
そして、なによりアリアに殺される。
これは間違いない。

「お兄ちゃん?」
「デルマーノ様?」

顔を青くし、額から汗を垂らすデルマーノにシャーロットとジルは首を傾げた。
そんな二人へデルマーノは口早に告げる。

「い、いや……マジでヤバいんだ。きっと、俺は殺されるし、アリアに生かされたとしてもジジイになんと言われっか…………」

「……?」

デルマーノはシャーロットとジルの瞳を交互に覗く。
この二人に説明したところで分からないだろうし、分かったとしても従うとは限らない。
魔法で従属しているのだから「来るな」と一言、命じればいいのだが、奴隷出身のデルマーノの脳裏にその選択肢は浮かんでいるはずもなかった。

「…………ちっ」

デルマーノは舌打ちをする。
次にガシガシと頭を乱暴にかき乱した。

「あ〜っ、ちくしょ……おまえらなァ、人間の世界なんてつまんねぇぞ?騙すし、嘘吐くし、戦争だってある。やめといたほうが賢明だ」

デルマーノの台詞に目をパチパチと瞬かせたシャーロットとジルは数秒ほど思案した――おそらく、思案するフリをした後に口を開いた。

「でも、外の世界にはお兄ちゃんがいるじゃん」

「そうです。デルマーノ様は性格は悪辣ですが、他人を貶める方ではありません」

「おい、ジル……悪辣は誉め言葉じゃないんだが……はぁ」

デルマーノは肺の中を空にするついでに悩みもすべて吐き出すかのように溜め息をついた。
そして、吐く息がなくなると次に息を吸い込み、シャーロットとジルを改めて観察してみる。
見た目は幼女ながらも大陸屈指の実力を持つ真血種の少女。
闇色のナイトドレスがその白い肌に映えていた。
ただ、生活するにあたってその腰まで伸ばした蒼い髪の毛は邪魔になるだろう。
一方、隷属種のエルフはといえば逆に大きな街にならば立っていてもそんなに注目を集めることはないはずだ。
エルフやハーフエルフは珍しいがいないわけではない。
少し厳しい感じもするその美貌は目を引くかもしれないが、醜いよりはマシだ。
美人は探せばどこにだっているし、見慣れることができるからである。
身に纏ったメイド服もゴーレムながらもすでにメイドが一人いるノークの屋敷ならば問題はない。
そこまで考えたデルマーノはもう一度、嘆息して口を開いた。

「はぁ……いいぜ、来いよ。問題はいろいろあるだろうが――なんとかなるだろ」

その問題の中で最初にして最大の難関――恋人であるアリアへの説得について考えたデルマーノは胃に痛みを覚えた。

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