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元隷属の大魔導師
官能リレー小説 - ファンタジー系

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元隷属の大魔導師 152

シャーロットは戦斧に漆黒の波動を纏わせ、迫り来る氷柱へと薙いだ。
氷柱はその漆黒の波動へと触れた瞬間、砂城を崩すかの如く霧散する。
続けざまにシャーロットは戦斧の刃を地面に置いてあるモノを打つように振り上げた。

ガッ…………ガァンッ!

シャーロットの手元から迸った雷撃の波は床を走り、デルマーノを飲み込もうとした。
当たれば黒こげは必至だろう雷の塊に視界を覆われてもデルマーノは「ヒヒッ……」と小さく笑い、左手を広げて突き出す。
すると一瞬で生まれた何重もの氷の壁が彼の身体を包み、雷撃から護った。

雷撃の波も絶えると氷の壁はヒビ割れ、崩れ落ちた。

――ヒュッ

その崩れる氷の結晶の間から空を切って、ナニかがシャーロットへと迫る。
目を凝らすとそれはデルマーノの戦闘槍であった。

ガンッ!

シャーロットの反応速度を超えたソレは彼女の身体ではなく、手に持つ戦斧へと直撃した。
不意を突かれたシャーロットは即座に握力を強めたが、右手だけで持っていたのが災いしたのだろう、戦斧は指の間をすり抜けて空に舞った。

「ぁっ……くぅ!」

小さく悲鳴を上げたシャーロットだったが、敵がまだいる事を思い出し、警戒する。
首筋を撫でられたような不気味な殺気を感じ、視線を上へ向けたシャーロットの瞳に氷で出来た突撃槍を構え、飛びかかるデルマーノの姿が映った。
その突撃槍の先端は氷製だと言っても十二分な殺傷力を有している。
脳で考えるよりも早く、シャーロットの身体は動いた。
年端もいかぬ少女の風体を持っているが徒手空拳での戦闘も熟練の域に達しているのだ。

「っ……たぁっ!」

突撃槍の先端を避け、デルマーノの身体に包まれるように潜り込んだシャーロットは左足を軸にし、右足を突き上げた。
美しい弧を描いて爪先が穿たれる。

ドンッ!

まるで巨人族の地団駄のような爆音を響かせ、シャーロットの旋脚を受けたデルマーノは宙に浮いた。
しかし、シャーロットは眉を潜め、焦った表情を浮かべる。

「な、によ……これ?」

シャーロットの呟きに合わせるようにデルマーノの――デルマーノの身体だと思っていたモノが砕けた。
詳しくは分からないが光系統の魔導で自分の身体に似せた氷へ色彩を付けたのだろう。
無駄に几帳面な事に突撃槍には色が付いていなかった為にシャーロットは安易に騙されてしまったのだ。
あまりの事に身体が硬直してしまうシャーロット。
それは今、自分が相手している男にとって充分過ぎる隙である事を分かっていた。

ュンッ!

「つぅ……」

シャーロットは背後から迫る脅威に振り返り、直ぐそこに迫る己の頭部を狙った戦闘槍の切っ先を右腕でガードしようとする。
しかし、右腕に走るだろう、と覚悟した激痛は襲ってこなかった。
シャーロットの腕に触れる瞬間、魔導照明を反射して煌めいていた刃が忽然と消えたのだ。
戸惑うシャーロットの視界を紺色が支配した。
それがシュナイツ宮廷魔導師のマントで、デルマーノが己に背を向けているのだと彼女が気付いた瞬間――

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