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元隷属の大魔導師
官能リレー小説 - ファンタジー系

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元隷属の大魔導師 16

しかしここで拒み、体調を崩しでもしたら元も子もないのでアリアはデルマーノから右に一人分離れ、湯に入る。

「……ふぅ」

恥ずかしさはあるものの、冷えた爪先から徐々に温まっていくのは気持ちが良かった。
身体が温まり、落ち着くとアリアは隣で湯に浸かる男に対し、数々の疑問が溢れてくる。
目線を向けると折角、取り戻した平常心が崩れそうなので前を向きデルマーノに話しかけた。

「ねぇ……なんでデルマーノはノーク殿に弟子入りしたの?」

「あん?……まあ、奴隷出身で魔導師を目指すってぇのは、特殊だわな」


デルマーノは、ふぅ〜、と天井を見つめ、息を吐く。

「……俺は、ウェンディの奴隷街で産まれた。お袋は俺を産んですぐに死んだし、親父はどこの誰かも知らねぇ。まぁ…奴隷街じゃあ、んなガキはうじゃうじゃいたけどなぁ。ヒッヒッ…」

彼は自分の過去を話し始めたが、その声色には思い出への懐かしさが含まれていた。
ウェンディとはカルタラ同盟国家群の一国である。

「それでだ。俺が五つの時だったか、その奴隷街に奇妙な女が現れた。その女はまだ若ぇのに何を思ったのか奴隷街のガキ共に文字を教え、神への信仰を説き始めた」

「…修道女だったの?」

「ああ、従神官になったばかりだんだとよ。その女がジジイの娘で、それでな…」

「ノーク殿には…娘がいたんだ……今は何をしているの?」

「………アイツに言わせりゃ…神の園へ招かれた、か?」

「っ!」

「…十四年前、確かに奴隷は解放されたよ。だがっ、本当にっ、俺達は自由になったのかっ?…んな訳ゃねぇ。そりゃ、クソみてぇな事を強制されなくはなった。でも殆どの奴等は前と大して変わりゃしない」

彼は決して怒鳴ってはいない。しかし、怒りは伝わってくる。相手は民か?貴族か?…女王か?
元奴隷への差別は未だに根強く同盟国家群に残っている。
そしてアリアは思い出した。ウェンディは奴隷制撤廃に反対していたのだ。

「彼女は……まさか?」

「はっ……御名答。あのウジ虫共に殺されたんだ。テメェの所為で奴隷が楯突く、テメェの所為で奴隷が自由になった……そう言って彼女を虐待したよ、奴等ぁ…」

デルマーノは誰とは言わなかった。恐らくそれは誰か個人の事ではなく、その国であり、このカルタラ同盟国家群、全ての事なのであろう。

「…………けっ、下らねぇ事を言っちまったな。ジジイには秘密にしてくれ」

「……下らなくない。下らない訳ないわっ!貴方のその怒りも、悲しみも…全部、私達の所為でしょ?なのに、なの…に……グスッ…ゥ……」

アリアは自然と涙が零れた。自分達は今まで奴隷出身者をどんな目で見てきたのだろう。少なくとも、人間に向けて良い物ではなかった筈だ。しかもそれを当然としていた。

「おいおい……別にテメェが悪い訳じゃねぇだろ。十四年前だぞ?」

「ごめ…んなさい……ズッ…ご、めん…」

「だぁ〜……面倒臭ぇ」

デルマーノは頭を乱暴に掻くとアリアの腕を引き寄せ、頬に唇を添える。

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