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元隷属の大魔導師
官能リレー小説 - ファンタジー系

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元隷属の大魔導師 142

敵の最大戦力へはアリアが立ち向かい、残りの敵を速やかにウルスラが近衛騎士団と連携して駆逐する、というのが事前に決めた作戦である。
この作戦は当然、フローラやエーデルなど、アリアの身を案じる者達から反対されたが、ウルスラの戦闘能力が良い意味でも悪い意味でも未知数な事、アリアが敵の実力者であろう吸血鬼と一度、相対している事、そしてアリアがウルスラに対吸血鬼、対妖魔戦闘の手解きを受けた事を考慮し、結果的にこの作戦が通ったのだ。
ウルスラは即座に状況判断するとドワーフの吸血鬼の元へと駆け出した。
ジルではないエルフの吸血鬼と対峙するエーデルは若干の優勢に立っており、人間の吸血鬼の一人と剣を合わせる第二王女付き近衛騎士隊々長メルシーは拮抗している。
残りの人間とドワーフの吸血鬼にはそれぞれ、近衛騎士隊員達が取り囲み、剣を向けていたが、元々、怪力を持つドワーフが更に吸血鬼になって筋力が上がったのだ、騎士達を圧倒していた。
そこへ対吸血鬼戦闘のスペシャリストであるエクソシスト、ウルスラが向かったのは正確な判断だと言える。

「…………魔導剣、ですか」

ウルスラの背中を目の端で捉えたジルは呟いた。
変わらず刺突の型を取るアリアは一瞬、なんの事だろうと疑問符を浮かべたが直ぐに自分の剣の事を言っているのだと気が付く。

「属性は――風ですか?なかなかの業物です。そして貴女もそれに見合うだけの力量を持っていますね」

ジルの視界にはもう、アリアしか映っていなかった。
この封印結界魔法も使用魔力の制限であり、魔力事態の無効化ではない為、すでに魔術を付与している魔導器具の類には効果を成さないのもジルに災いした。
そこで「いや、違う」と自身の考査を否定する。
あの魔術師の事だ、この状況を狙っていたのだろう。
ならば、対処方法は一つ。
この厄介な結界魔法を張っている魔導師を殺し、その後、魔導で敵を殲滅、そして主の餌となるあの少年の行方を捜せばいい。
すると、現在における最大の障害は目の前の女騎士だろう。
彼女を振り切ってどこに居るかも分からない魔導師を捜し出す事は不可能だ。

「………………」

「………………」

そんなジルの思考をアリアは容易に想像できた。
今、ヘルシオにはフローラ一人しか護衛が付いていないし、本人は魔法の発動だけで手一杯だ。
ここで自分が破られる事が即、結界の消失と全体の敗北へと繋がる。
アリアはグッと半身で前に出した左足へと僅かに体重を移動させた。
それを受け、ジルは突きへ対処するため、横一直線に剣を構える。
なるほど、剣も達者なのか、とアリアは胸中で一人、漏らした。

「「………………」」

剣を構え合った二人の間に緊迫した空気が流れる。
しかし、どちらもこのまま固まっている訳にはいかなかった。

「………………」

「…………はっ!」

そんな拮抗状態の中、痺れを切らしたのはジルの方であった。
正規剣術ではありえない剣を持たない左側を前にしてアリアへ迫り来るジル。

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