元隷属の大魔導師 135
「「「……………ええぇぇっ?」」」
そこに集まった者達、音読しているアリアですら驚愕に叫んだ。
事態が起きたのは国外であったとしてもデルマーノの要請で参戦したウルスラを除くと関係者にワータナーの者はいないのだ、ワータナー諸島王国に報告する必要性はなかった。
「ちょっとっ?リーゼ女王になんで言っちゃうのぉ!」
バンッと机を叩くエリーゼをアリアは宥める。
「あ、あの……続きに理由が書いてあると思いますが……」
「……〜〜〜っ!」
フルフルとその小さな顔を揺らすもエリーゼは落ち着き、息を整えた。
そんな主の様子を確認し、アリアは続ける。
「『リーゼ女王や重臣共にシュナイツ王国の有力幹部の子息が吸血鬼に襲われた、ワータナーは何故、吸血鬼を野放しにしていたんだ?と言ったら快く、協力を申し出てくれた』………って、デルマーノ。貴方……」
アリアは悪い意味で優れた行動力を持った恋人に呆れて、二の句が告げなかった。
これは国際間と、規模が大きくなっただけの脅迫ではないか。
「ア、アリア……まだ、続きはある?」
エリーゼは不安そうに尋ねる。
自分が訪れている最中に国家間にヒビが入りかかっているのだ。
正直、今にもベルトコルタ城に向かい、デルマーノをひっぱたいてやりたいのは山々なのだが、未だに己を苛立たせる馬鹿魔導師の行動理由が語られていない。
手紙は後、一枚残っているのだ。
きっと、そこに理由が書かれているはずだ、とエリーゼは考えたのである。
アリアは主君の勧めに従い、二枚目の手紙の続きを読み始めた。
「『……何故、俺がんな面倒な事をしたのか、知りたいか?それはこの国の書庫に用があったからだ。この手紙を書いて半日もすれば、俺は真血種相手でもヤりようがあるようになるだろう―――』」
そこで一旦、言葉を切るとアリアは三枚目へと視線を移す。
「…………、…………っ、なに?……これ………」
アリアは三枚目の手紙を見た瞬間、呆然と呟いた。
そんな彼女の反応に慌てて、食堂に居残った一同は件の手紙を覗く。
「「「……っ?」」」
その紙面を見たエリーゼたちは息を飲んだ。
そこには『追伸。アリア、ヘルシオにコレを渡してくれ。いくらヘボなアイツでもこの試作魔導陣さえあればなんとかなるだろう』と書かれ、その下に複雑怪奇な一般言語ではない文字の羅列が描かれていた。
ソレを見たヘルシオは声を上げる。
「これは……結界魔法っ?しかも―――見たことがない……なんだ、この呪列は?」
「……えっ?なに?どういうこと?」
ヘルシオの茫然とした呟きにフローラは聞き返した。
「え、ええ………私はこれでも一通りの魔導書は読破しています。しかし、この呪列……呪列とは結界魔法や魔導付与の時に用いる高次魔導文字なんですが………この呪列はどの魔導書でも読んだ事がないんです」
「…………つまり?」
フローラは余り意味が分かっていなかったのだろう、首を小さく傾げてヘルシオに尋ねる。
「………この呪列は……ありえない」