元隷属の大魔導師 14
その無念を晴らすのに、老い先短い儂にはこれが最後の機会じゃ。
それをコイツも薄々、分かっておるのじゃな。くくっ……いくら斜に構えようが、人の本質は変わらんな、デルマーノ?)
菓子を頬張る弟子を見て、『紫水晶』は決心した。
「…ふむ。儂とこの未熟な弟子、微力ながらもシュナイツ王国に尽力いたそう。よろしいかな、エリーゼ王女?」
「……え?ええ…勿論ですわ。では早速、明日にでも王宮にいらして、それから…」
大した会話もなくノークが招集に応じた事に驚きながらも、エリーゼは今後を説明していく。
ノークは元々、シュナイツ王国魔術学院に勤めていた事もあり、王都ディーネに屋敷を持っている。
王国が認証さえすれば直ぐにでも宮廷魔導師団に仕えることができるだろう。
話しは間もなく纏まり、アリアとエリーゼは客室に通された。
「すまんの、相部屋で。客室は常に一つは泊まれるようにしておったんじゃが」
「いえ、一部屋で大丈夫てす。昔は遊びに来た姫様とよく寝泊まりもしていましたしね」
「なら良いんじゃがな。何か用があればレベッカを呼ぶといい。その…うむ、そのベルを鳴らせば来るじゃろう」
ノークが去った後、エリーゼはドサッとベッドに倒れ込んだ。
「はぁ〜……疲れたわ」
「でも、良かったですね。ノーク殿が宮廷魔導師団に入っていただいて…」
「まあね、それは良かったんだけど…………」
エリーゼは枕に埋めた頭を小刻みに震わせる。
「……姫様?」
「〜あの、奴隷上がりめぇ……」
相当、デルマーノの態度が頭にきているようだ。王族のエリーゼとしては我慢できないのだろう。
アリアがふと目を向けるとエリーゼの着ている服が所々、破けているのに気付いた。
試しにアリアは机の上のベルを鳴らすと澄んだ音が響き渡る。
「…何か御用でしょうか?」
数分と待たせずにレベッカが部屋に訪れた。
「すまない。姫様に代えの召し物を貸してもらえないか?」
「……かしこまりました。貴女にも必要ですね。数着、ご用意いたしますので少々、お待ち下さい」
レベッカは一度、礼をすると静かに退室する。しばらく待つと女性用の室内着を四着と数組の下着を持ってきた。
アリアは男二人しかいないこの塔に服ならまだしも何故、女性の下着まであるのかを疑問に思ったが口にはしなかった。
服はどれもだいたい、二人のサイズに合っていたが下着は別である。
「……キツいな」
「うっ……私はあまるんだけど」
下着を手に取ったアリアの呟きにエリーゼは互いの胸を見比べ、溜め息を吐く。
「……申し訳ありません」
「謝らないでよっ。私、まだ発育途中なだけなんだからね!」
エリーゼはそう言うが齢十八では絶望的であろう。
「……レベッカさん、浴室を借りたいのだが…埃やら汗やらでベトベトなのでね」
「浴室は階段を地下まで降りていただくと直ぐです。湯は源泉から引いてますのでいつでも入れます。では…」