屍美女の大群 45
トン。
次の瞬間、智恵美の身体は無数の穴の開いた石壁の中に飛び込んでいた。
佳代が智恵美を突き出したのだ。
「え?」
「智恵美。駿のため、尊い犠牲となっておくれ」
両手を合わせて謝罪する佳代。
次の瞬間、智恵美の身体は穴から飛び出してきた無数の矢に刺し貫かれていた。
役立たず属性だけでなく天然属性でもついているのか、穴あき壁の終わりまで転がり串刺しになっていく智恵美。
気づけば壁に仕掛けられた罠は矢まみれになった智恵美1人で全部解除されていた。
「ち、智恵ママっ!?」
「ちょ、ちょっと佳代ママっ、何やってんのよッ!?」
あわてて智恵美の介抱に向かう明日香と、佳代の非道ぶりを非難する響香。
しかし佳代は必要悪だとばかりに反省の色がない。
「大丈夫じゃって。あたしらは不死身じゃからすぐ復活するはずじゃ・・・たぶん(ボソッ)」
「『たぶん』!?今たぶんて言った!?」
「は!?何言っとる。
あたしがそんな適当なことで無梅を犠牲にするわけなかろう!?」
いくら無能とは言え、智恵美をためらわず犠牲にするとは・・・。
この時響香は、決して彼女だけは敵に回すまいと固く心に誓った。
「ち、智恵ママっ、大丈夫!?」
「う、うう〜。い、痛いのぉ〜・・・」
向こうでは刺さった矢を引っこ抜く明日香と、痛みに悶える智恵美。
何とか自己修復がうまくいっているらしく、傷は見る見るうちにその存在を消していく。
「うむ!智恵美のおかげで道が開けた!先を急ぐぞっ!」
そして安全になった通路を1人堂々と歩く佳代。
それを見た響香と明日香は智恵美のためにも、今度は罠を見つけてもすぐには報告せずに抜け道を探そうと痛みに苦しむ智恵美に同情と憐憫を禁じざるを得ないのだった。
「響ちゃん・あーちゃん・智恵美、何をしている行くぞい。駿坊待っておれ今助けに行くぞ!!!(きっと駿坊は弓姫様の所じゃ間に合ってくれ)」
そして、智恵美をおとりにした佳代は全く動じず駿の身を案じていた。