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屍美女の大群
官能リレー小説 - ファンタジー系

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屍美女の大群 282


「ダメだよ、みんな。
 いくら潜水艦の中が狭いからって、順番を争って外に出ちゃ。
 潜水艦を壊したら佳代ママ、怒っちゃうよ?」
「へ?」
「え、駿兄・・・?」

駿の言葉にあっけに取られる一堂。
どう見ても自分たちは駿が心配で来たことがわかっているはずなのに・・・。

「それじゃ僕は用があるから。あんまり騒いじゃダメだよ?」

駿はそう言うと、みなが何かを言う前にさっさとその場を後にする。
残された面々はそれを黙って見送るしかなくて。
駿がいなくなった後、明日香と美羽が恐る恐る口を開いた。

「バレ・・・なかった?」
「しゅ、駿兄が鈍感で助かった〜!」
「んなわけあるか、バカっ!?」

ゴン、ガンっ!

あまりにおバカな2人の発言に、綾子の鉄拳が飛ぶ。
これは体罰などではない。愛のムチである。念のため。

――――

家族と別れた駿が向かった先。
それは恋人を失い悲嘆に暮れる、あのマリナの部屋だった。
そこには妹の留美が、心配そうな様子でじっと扉を見つめていた。
その様子はまるで主人を心配する犬かネコのようだ。

「留美さんもマリナさんを励ましに来たの?」
「っ!?しゅ、駿さん!」

まわりのことなど目に入っていないくらい、心配していたのだろう。
駿の呼びかけに、留美はひどく驚いていた。
もっともその気持ちはわからなくない。
駿も家族が死に、化け物(屍美女)になったあの時、彼の頭の中は絶望で真っ白になってしまった。
ミイラ化した義兄。その上で狂ったように腰を振るう姉。
そのそばで絶望の涙を流しながら息絶えていた妹。
あの後、襲いかかってきた姉を返り討ちにし、正気に戻せなければ、あのまま朽ち果てることを選んでいたかもしれないのだ。
それだけに今のマリナや留美の気持ちは、痛いくらいによくわかる。
驚いていた留美はようやく落ち着きを取り戻すと、無理に笑顔を作って質問に答えた。

「ええ・・・。私でも何か力になれないかと思っていろいろやってみたんです。
 まだ、うまく行ってないですけどね」

そう言う彼女の足元には、手のつけられていない、冷め切った食事が置かれていた。

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