屍美女の大群 176
やってきたときの難破船や静那のいた洞窟などしらみつぶしに探したが、全然見つからない。
おそらく常に移動しているか、隠れているのだろう。
一応、相手を安心させるために男の駿も連れて行っているが、ここは凶暴な屍美女のいる島だ。
男を見ても露出狂みたいな格好をした女のせいで、警戒しているのかもしれない。
マリナも男を見つける時間を少しでも長くするために、ご機嫌取りや修理の遅延など行っているが・・・。
潜水艦を壊すようなマネもできないし、屍美女たちが駿にご執心である以上、どうにも限界があった。
「はあ・・・」
マリナはため息を1つつくと、トイレから出た。
廊下を歩いていると、向こう側から女の悲鳴とあえぎ声が聞こえてくる。
懲りもせずにまた盛っているのだろう。
(―――助けて)
生きる希望を見失ったマリナは、救いを求め、行方不明の男に向けてそうつぶやいた。
瞳から一筋の涙をこぼしながら。
――――
「・・・おい。あれは何だ?」
そして6日目の朝。相変わらずの逃亡生活を送っていた生き残り組2人は駿たちの拠点のすぐ近くにやってきていた。
「何だ?何かあったのか?」
「ああ。何か小屋のようなものが・・・あっ!?ま、マリナ!?」
「ば、バカッ!?」
男の1人が別れ離れになった恋人の姿を認め、思わず声を上げる。
それに驚いたのは相方の男だ。
いくら見つからないように工夫しているとは言え、所詮は人間。
野性を取り込んだ獣型に見つからないとは限らない。
相方はあわてて男の口をふさぎ、身を潜めて辺りをうかがう。
不気味なほどの静寂が辺りを包む。
数分の間沈黙を維持してから、相方は近くに屍美女がいないと判断した。
「ばっ、バカ野郎ッ!?何大声出してやがる!?
もし今度あの化け物連中に見つかったら、殺されかねえんだぞ!?」
「す、すまん・・・」
小声で怒鳴るという器用な真似をしながら怒る相方に、男は素直に謝罪する。
いくら仲間が見つかってうれしいとは言え、死んでしまったら何にもならないのだ。
お互い落ち着いて頭が冷えたところで話を再開。
「・・・で?間違いなくそこにいたのはマリナだったのか?」
「あ、ああ。間違いない。着ていた服がボロボロだったが、あれは間違いなくマリナだった」