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魔剣使い
官能リレー小説 - ファンタジー系

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魔剣使い 9


―いいのか…このままで?
目の前には女が倒れている。
―置いていけるのか?
今の世…情けは身を滅ぼすだけだ……
「………ついてねぇな……」
苦笑しつつ女を背負い、逃げ出す。だが、山の如き緑人逃げ切れるわけもない。
「本当…ついてねぇ……」
そう呟くと半ば諦めながらも逃げ続ける。

すると突然、馬の嘶きが響き渡る。白馬に乗り、颯爽と現れたのは金髪の女だった。
「罵詈雑言を吐くし、力も貸さないなどと言うので、部下たちが返してしまったが…どうも気になってな。おもわず追いかけてきてしまったよ。」

笑みすら浮べ、戦乙女の紋章を掲げた女は緑人を見上げる。
「聞こえているんだろ。今だけでいいから私に力を貸してくれ。」
すると、沈黙を続けていた魔剣がしゃべりだした。
「……こんな風に死なれちゃ気分も悪いからな…今だけだぞ?」
布を破り、金髪の手に収まった。


「しかし汝は正しい使い手ではない。ゆえに我が真の力は引き出せぬ」
「どうすればいい」
「敵に直接斬りつけよ。我がうつし身が触れてさえいれば、使い手に関わらず我自身の意思で、わずかながら力を注ぎ込める」
「あれに近づけというのか」
女戦士は緑人の巨体を指しながら、苦笑した。
だが、萎縮している風ではない。恐れを知らないのかと、男は目を剥いた。
だが違った。
「…よかろう」
答えて剣を掴んだ女戦士の目は、澄んでいて、一切迷いがなかった。
剣を突き返してきた女騎士のような、猛々しさも険しさもない。否、戦いにおいては、苛烈にも残忍にもなれるのだろう。それだけの力強さは感じ取れる。
だがその目は穏やかで、ひたすら、誇り高かった。
彼女は本物の戦士なのだ。

「貴様らは隠れていろ」
短く彼に告げると、女は馬の腹を蹴った。
つむじ風を巻き起こして、馬が彼らの脇を駆け抜ける。
放たれた矢のように騎影がまっすぐに緑人につっこむ。金髪が月光を弾いて、夜の奥にひらめいた。

緑人の弩弓が放たれるのが見えた。彼は思わず目を覆った。
だが、女は巧みに馬を操り、ぐっと馬身を沈めて杭を避けた。
そのまま緑人の間近まで距離を詰めてしまう。
「おお!」
そんな場合でないのはわかっていたが、彼は思わず歓声をあげた。
女はもう頭部に迫っていた。剣を振り上げるのが見える。
あれほど偉そうな魔剣だ。それなりの、せめて状況を打破する程度の力はあるはず…

期待をこめて見守る彼をよそに、緑人の背から、無数の枝がぐうんと伸びた。
そのまま蔓のように弧を描いて曲がると、切っ先を下に落下してくる。

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