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魔剣使い
官能リレー小説 - ファンタジー系

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魔剣使い 8

「魔法力が枯渇しかかっているの。今のが最後の一発でした。呪文を練り直せるかどうか…」
「ええ!?嘘だろ?」
頼りない言葉に、彼は思わず聞き返した。
彼女は申し訳なさそうに首を横に振る。

緑人の巨大な体は、わずかな欠損などものともしなかった。本体自ら地を這うように追ってくる。
それを見て、彼女は彼の背を押した。
「何とか時間稼ぎをしてはみます。でももしだめなら…いいですか、迷わず走って逃げてください。来た道を戻って、隣町に入るの」

彼女は走りながら、片手を顔の前に掲げた。

「五指に宿りし五名の火精」
ポウ、と女の掲げた右手の爪先に、オレンジ色の光がともった。
呪文だ。

「二と零なる円陣を成せ。円陣よ。八と七つの回転を為し、しかるのち、二と零なる真球を成せ」
早口に呪文を組み上げる。
彼女の語るまま、爪先の光点が中空の円を描き、円は縦に回転して小さな五つの球状になった。

彼女はそこで足を止めた。彼もつられて立ち止まってしまう。
何事かと振り返ると、彼女は目をかたく閉じ、瞼を震わせていた。集中しているのだ。
直立しながら、体を支えるためだろうか、スタンスをとろうと足をじりじり動かしていく。
白く、つま先のほのかに色づいた小さな足が目に入った。

女は裸足だった。
彼は初めてそれに気づき、なぜかはっと息をのんだ。

「目覚めよ、十一番目の地精」

彼女は、そのやわらかそうな足うらで、力強く地を蹴りつけた。
呪物らしき金鎖のアンクレットが、細い足首にさらりと揺れる。
「中空球なす五名の火精よ。十一番目の地精と結べ」

正確に、彼女の指先で何が起こっているのかはわからない。
だが、先ほど爆発を起こした、黒光りする球体が彼女の手の中にできあがっていた。
二つ。
「五発作るはずだったのに。もう限界ね」
彼女は自嘲するようにつぶやいた。

動きは緩慢とはいえ、小山ほどの巨体だ。緑人が迫ってくる。
苦心して作り上げた球の一つを、彼女はすぐに投げつけた。
合図の言葉とともに、巨大な頭部のそばで爆発が起こる。
緑人の動きが止まった。頭部を爆発にさらされて、目を回したのだろう。
だが、黒い目は意識を保っており、彼らから視線を外してはいなかった。

彼がそう見てとったとたん、ぐらりと、女の体が大きくかしいだ。
「えっ?おい!」
あわてて手をのばすも間に合わず、女は膝から地に崩れ落ちた。
うつぶせに倒れた女は、何とか顔だけを上げていった。
「魔法力の限界です。しばらくは、動けません。あなたは逃げて…。これを…」
そうして、黒い球体を彼に差し出す。
「聞いていた…でしょう?あの言葉を聞かせれば、爆発するようにしましたから…」

ごめんなさい、となぜか謝りながら、彼女は意識を失った。

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