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魔剣使い
官能リレー小説 - ファンタジー系

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魔剣使い 47


 猫のような、切れ長の眦の上がった大きな目が、タナハを見てますます大きく見開かれた。同時に、鋭く息を吸い込む呼吸音。
「あ、あんたは……」
 つんととがった小ぶりな鼻に、小さくふっくらとした唇、とがった細い顎。小さな白い顔に、それらがバランス良く配置されている。ゆるく波打つ癖毛は今はきれいに整えられ、艶を帯びて肩に流れ落ちていた。小柄で痩せた体にゆったりとした魔法使いのローブを纏っているせいで、よけいにか細く儚げに見える。
 美女というよりは愛らしさの勝るタイプではあるが、十分にきれいな娘だ。
 わざわざ思い起こすまでもなかった。あの娘だ。魔剣を得た日、緑人を倒した村で出会った……出会い、魔剣の糧とするべく陵辱した魔法使い。
 町の住人は確かに、彼女を指して『ゲルダさま』と呼んだ。
 言葉を失った二人を、ゼノバ長官は訝しげに交互に見やった。
「おや? 既知の間だったのかね?」
 タナハは慌てた。
「い、いえ……」
「いいえ、存じ上げません」
 しどろもどろにごまかそうとしたタナハを遮るように、ゲルダが凜とした声できっぱりと否定する。彼は思わず彼女をうかがったが、ゲルダは故意に彼から目を逸らし、一顧だにしようとしなかった。
「そうか。エルへ君、彼はヤーマー・タタナハル氏。報告のあったS級相当の魔剣の売り手にして、唯一の使い手だ」
 ゲルダはふたたび目を見開いた。
「今臨時雇用の話を持ちかけているところなのだが、一つ問題があってね」
 長官は一つ息をつくと、机の上で指を組み合わせた。
「君には、彼の異種属退治に同行し、魔剣に力を与える役割を担ってほしい」
「そ、れは、どのような…」
「彼の魔剣には、婦女の精力が必要らしいのだよ。男女の交合によって力を増すそのような呪物が他にもあっただろう。あれと似たような仕組みだと思われる。君のような強い魔力と意思力を持つ女性が必要なのだ」
 言わんとすることを正確に理解したのだろう。ゲルダの顔はみるみるうちに青ざめた。
「長官さま、ですが…」
「無論、承諾するか否かは君の自由意志に任せるよ。今夜一晩考える時間を与えよう」

 茫然自失の体で退室していく彼女を見送って、タナハはおそるおそる口を開いた。
「あの…」
「何、心配はいらない。彼女は承諾するとも」
 あっさりとゼノバ長官はそう言った。
 そんなんでいいのだろうか…と首をひねる彼に気付かず、長官は続けた。
「彼女は魔道部門の有望株でね。とある町を壊滅させた、小山のような緑人を強大な魔法で退治したこともある。我々の切り札だ」
 身に覚えのある話に、タナハはぎくりと体をすくませた。
「へ、へえ…すごいですね」
「魔法というのは基本的に小手先の技術で、それだけの威力を持つ呪文は存在しない。従って、彼女は『消滅序詞』を唱えることに成功したのだと、我々は考えている」
 聞き慣れぬ単語だ。タナハは首をかしげた。
「『消滅序詞』? っていうと…」
「一切を消滅させる呪文のようなものだ。正確には、呪文にそのような効果を持たせる『序詞』なのだが…私も完全に理解できているわけではない。なんと云っても、魔法使いの領分なのでね」
 彼は肩をすくめた。
「古い文献に、その存在のみ伝えられている秘術だ。魔道部門では長年その研究に取り組んでいる」
 なぜそんな話を、とタナハは訊ねようとした。
 興味深い話ではあるが、彼に関係があるようには思えない。だが、彼が訊ねる前に、長官はさらに続けた。
「君の成した仕事についての報告を聞いていると、不思議とその消滅序詞による効果と魔剣の破壊の力が酷似しているように思えてならない。君に同行することは、彼女の研究の助けにもなるはずなのだ」

 ひとしきり仕事の内容を説明してから、長官は執務机の上の書類を取った。
「これで良いかね? 契約書に署名を頼む」
 タナハは差し出された書類にざっと視線を走らせた。一通り文面を読んでいき、最後の署名に目が留まる。
 警衛士庁長官ゼノバ・ハギア。
 そう、確かに国政議会の議員であるゼノバ長官のフルネームはこんな名だった。
 彼はその署名を凝視した。それ以上に、ハギアという名に聞き覚えがあったのだ。何の機会に聞いたのだったか…思い出そうと記憶をたどるうちに、脳裏に、甘く悲愴な喘ぎ声がよみがえった。
 彼は思わず顔をしかめてしまった。 


※※※


「やはり来たね」
 タナハが去ってからほどなくして入室してきた人物に、ゼノバ長官は満足げな笑みを浮かべた。
「来なさい、エルへ君」
「は、い…」
 ゲルダは誘われるまま執務机を回り込み、長官の脇に立った。彼は座ったまま、彼女の顔に手を伸ばした。頬をさぐり、髪を掻き撫でて耳朶を弄ぶ。ゲルダは息をつめた。それから、つう、と首筋をたどり、鎖骨をなぞって、彼の手はまるで偶然のように、乳房をとらえた。服の上から形を確かめるように手のひらで押しつぶし、撫でさする。
「あっあっ…」
 すすり泣くような喘ぎが洩れる。ゲルダは目を閉じ、がくがくと膝を震わせていた。
 白い皮膚に血の色が上ってくる。危うい足元に、長官は笑って彼女を引き寄せた。
「きゃ…」
 抵抗もなく、ほっそりとした体がどっと彼の膝にくずおれる。膝の上に座らせた彼女を背後から抱く形で、彼は右手だけを、その襟元に差し入れた。
「んうぅっ…ぅあッ!」
 じかに乳房を揉みしだかれ、乳首を弄くられて、彼女は火を当てられたような高い声を上げた。
 呼吸が荒くなり、耐えるように背を彼の胸に押しつけ、身を縮めようとする。

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