魔剣使い 45
「話はわかったけど、だからって買い取りできないってことないだろ? 使える奴がいれば効力はあるわけで…」
我ながら苦しい、と思いつつタナハは詰め寄った。
「使用できる人材が多数いるならばそれでもよろしいのですが…例えば、ある血族や民族、身体的、魔術的な素養によって使い手が決まる場合です。このような場合は、わたくしどもとしましても取引相手がはっきりしているわけで、買い取りさせていただくのにやぶさかではございません」
ですが…と、タナハが頭の中で続けたのと同じタイミングで、彼は言った。
「解析結果によりますと、この剣の使い手は、おそらく時間的・空間的な要素によって決まると思われます。これまでの例ですと、一定の星の配置や気象条件、触れた何人目の人間か、などがあったようです。何千年に一度目覚め、そのタイミングで拾った人間だけが使い手になれる、というようなことも」
鑑定士の言葉は、そんなところだろうと彼が予想していた通りのものだった。
蝕は決して彼を選んで目覚めたわけではない。彼が蝕のもとを訪れたのが、たまたまそういうタイミングだったのだ。
本人(剣)は運命論がどうのと語るが、例え運命であったとしてもタナハの素養とは無関係なのだ。
同じタイミングで別人が訪れていれば、使い手に選ばれたのはその人物だっただろう。
「…ってことは、その鑑定書じゃ競売に出しても無駄ってこと?」
少々複雑な気分が顔に出ていたのだろう。店員はいっそう恐縮して…さらに悪い知らせを彼に伝えた。
「その、お客様、重ね重ね大変申し上げにくいのですが」
競売にかけても二束三文にしかならないと告げられるのだと彼は覚悟を決めていた。
だが続いたセリフは、それどころの騒ぎではなかった。
「実は警衛使庁より、S級以上と鑑定された呪武具に関しては、使い手の有無に関わらず報告するようにとの通達がございまして…」
「えっ?」
タナハは目を丸くした。
というわけで一時間後、タナハは武器屋の通報を受けてやってきた巡回警衛使に同行を求められ、警衛使庁へ連れて来られていた。
昨夜一晩過ごした警衛使庁庁舎へ、まさかのトンボ返りである。
「なるほど。女強盗は人違いをしてはいなかった…というわけだな」
今度は上階にある長官室に通されてきたタナハに、ゼノバはそう言って、おかしそうに口の端をつりあげた。