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魔剣使い
官能リレー小説 - ファンタジー系

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魔剣使い 44

「で? 見たところ文句なしのSランクで、買い取りに問題なさそうだけど」
「はい、実は…」
 書類を向こうに向けて差し出して見せると、鑑定士は声をひそめた。 
「このタイプの魔剣は使い手を選びます。選ばれた使い手でなければ、力を発揮できないのです」
「………」
 タナハは内心ぎくりとした。
「…こいつがそう言ったのか?」
「こいつ? …言う?」
 鑑定士は怪訝に眉をひそめた。
 どうやら意味がわかっていない。蝕は約束通り、何もしゃべっていないようだ。その場合、頭がおかしいんじゃないかと思われるのはタナハの方である。彼は慌てて言い直した。
「いや、その…そういうの、見てわかるものなのか?」
「セメト解析による結果に、呪物の使用者依存度を示すパラメーターがございます。こちらの項目です」
 鑑定士は書類を再び彼に向けて差し出し、一項目を指した。
「あー」
 呪物や非物理存在の魔力構成を解析する新しい手法を、外国の学者セメト・エメが発表したニュースは、確かに数年前に業界で話題になっていた。
 だが発表された当初、各国とも実用化には慎重な姿勢を示したのだ。解析に使用される特殊な呪具は稀少で、取り扱うのに取得が困難な資格を必要とする。信頼度とコストをはかりにかけて、結局普及は見送られ、セメト解析法は高等学府の研究者や軍部の独占するところとなった。
 …はずなのだが。タナハは首をかしげた。
 鑑定士は、彼の疑問に気づいたのか、訊ねられる前に答えた。
「この数年来の状況を受けて、半年前、政府が全ての有資格者を擁する呪物取り扱い企業に対し、呪物鑑定におけるセメト解析の実施義務と解析機器の無償貸与を決議しました」
 半年前というと、閑古鳥の鳴きわめく道具屋を閉めて、宝探しに出かけるようになったころだ。たまに地元に帰る以外は旅ばかりの暮らしで、すっかり世間の話題に疎くなっていた。
 話を聞いて、なるほど、と彼は思った。異種属の侵攻の激化を思えば、確かに今は有事と言えなくもない。有効な武器・兵器の能力を正確に測ることが求められるようになり、このような仕儀となったのだろう。
 この国は特に、敵対行為を行った異種属を、防人部省属の国軍のみでなく市井の傭兵や職業退治屋に賞金や報償を与えて積極的に討伐させている。彼らに良い呪具を調達させ、その効率を上げてやろうというわけだ。

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