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魔剣使い
官能リレー小説 - ファンタジー系

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魔剣使い 41


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 警衛使庁は広範囲の捜査線を布き、裏道という裏道をふさいだが、夜半を過ぎてもジプタ・カーナの確保にはいたらなかった。

 参考人として同行を求められたタナハは、半ば強制的に警衛使庁舎にやって来ていた。
 聴取には、ガニシャと呼ばれた警衛使も同席した。まだ青年といっていい、タナハとさほど変わらない年頃だろう。顔立ちはなかなか端正なのだが、眉間に寄ったしわと険しい目つきは、彼がその年頃の青年らしい浮かれた心地とは無縁であることを語っていた。
 彼は最初に責任者として自らを、ガニシャ・ダヴィ一火長、と名乗った。
 一火長というと、十数名からなる警衛使の単位チームをまとめる立場だ。役職につくにはまだ若いように見える。きっと優秀な男なのだろう。
「宿屋の従業員からの通報は、天井から血が染み出してきた、という内容でした。その直前にチンピラが三人その部屋に押し入り、地下の酒場で肌の黒い南国風の女が目撃されていたというので、かねてから指名手配中だったジプタ・カーナの犯行を疑い、急行したわけです」
 取り調べ担当の警衛使は、最後に駆けつけた経緯をそう語ると、筆記した書類を彼の方に向けた。
「では、奪われた品はこのリストどおりで間違いないですね?」
「はい」
「次の競売に呪物を出品しに都に来たあなたを、魔剣使いと間違えて襲った…ジプタ・カーナはそう言ったんですね?」
「間違いないです」
 証言を念入りに確認され、彼は頷いた。
 魔剣のことについては、あえてぼかして伝えていた。女の言葉が気にかかっていたのだ。防人部省に危険兵器として登録されるようなことになったら、換金するにも所持するにも支障がでる。
「災難でしたね。しかしあの女に襲われて、命があっただけでもよしと思うことです」
 警衛使の物騒なもの言いに、彼は顔をしかめた。
「あれはどういう女なんです?」
 思わず口をついて出た質問に、警衛使は簡単に答えた。
「ジプタ・カーナ。外見と名からして南国から流れてきたと思われます。数年前から都の繁華街を中心に活発に活動している、単独の強盗犯です」
 こそ泥、強盗、密輸密売、ゆすりたかりに美人局。考えうる犯罪は一通りやっているが、女の単独犯としては珍しく手口が残忍である。
 犯行現場にはたいてい、その場に居合わせた人間の残骸が残されている。
 しかしながら殺人は目的ではなく、あくまで盗みや不当な利益を求める行為の過程で、障害を排除しているにすぎない…というのが警衛使庁の見解である。目撃者が見逃されているケースが多いからだ。
 もっとも、被害者の全てが彼女に立ち向かったという証拠はない。現にタナハはいたぶられたあげく人違いにも関わらず…といっても、実際には間違いではないのだが、それにしても無抵抗のまま殺されかけたわけで、警衛使の言葉に素直には頷きがたかった。

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