魔剣使い 31
物足りない顔をした彼に、女はむろん気付いていた。彼女はつんと顎をそらし、勝ち誇った顔でこう言った。
「言いなさい」
「な、何を」
「わからないの? 望みを叶えたいなら、願うの。懇願なさい」
「こ、懇願? い、いいから早くいかせてくれよ…」
「それじゃあダメよ。口の利き方も知らないのかしら? お願いするときはどう言うの?」
「お、お願いします…」
「どうしてほしいの」
「あ、足でもっと、踏みつけてくれ…ください…!もっと強く、早く!いかせてください、お願いします!」
誘導されるまま何の抵抗もなく台詞がこぼれ出る。女にいいようにされる屈辱感が全身を満たし、彼はかつてないほどの…興奮と、安らぎを覚えていた。
女はそれ以上焦らさなかった。満足げに頷くと、彼の言葉通りに行動した。捻りつぶし、押しつぶし、締めつけ、搾りとる。痛い。だが…それだけではなかった。彼は襲いくる高潮に、びくびくと背をそらせ、大声を上げた。
「うあっ、あっ、ああああぁっ!」
栓を抜かれたように、精液が勢いよく噴き出した。
大部分が自らの腹に降りかかり、ぴゅくりと最後に流れ落ちた分が、女の褐色の足を白く汚す。
女は股間から足を離すと、すっと立ち上がった。頭の方に移動し、精液にまみれた足を、ぐったりと脱力しているタナハの眼前につきつける。
「?」
「あなたのせいで汚れてしまったわ。忌々しいこと」
本当に不愉快そうな口調に、タナハは不可解な悲しみを覚えた。軽く消沈してから、何やってんだとかぶりを振る。女のペースに飲まれすぎだ。隷属を至福とする性愛の深淵など、かいま見るにはまだ早い。
女はスカートの裾をつまんだと思うと、息をあえがせていたタナハの口に、いきなり足先を突っ込んだ。
「もがっ」
不意打ちに、反射的に彼は身をよじって暴れた。が、腕の縄がとけることはなく、徒労に終わる。
彼が大人しくなるのを待って、女は言った。
「きれいになさい。自分が出したものでしょう?」
相変わらずの猫撫で声だが、足先は容赦がなかった。ぐいぐいと無理矢理口を押し開き舌に押しつけられる。呼吸の確保のために、彼は自らその足の指に舌を這わせた。
自分の精液を舐める羽目になるなんて、とタナハは情けなさとおぞましさに内心で嘆いた。苦みのある青臭い粘液が口内にからむ。
よく手入れのされた足は、精液の他は汚れも臭いもなく、それだけは救いだった。さっさと終わらせようと、彼は熱心に女の足を舐め回した。ふっくらと柔らかな足うら、土踏まずの完璧な凹凸を丹念に舐り、親指から順に銜えては吸いつき、指の合間も逃さずに舌を潜り込ませる。
「う…ん…」
頭上で、女が小さく呻くのが聞こえた。感じているようだ。