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魔剣使い
官能リレー小説 - ファンタジー系

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魔剣使い 27

蝕の性格がどう、という問題ではないのだ。
口やかましいが、博識だし、それほど悪い性格でもない。
腐れ縁といった感じで、気安く話せるようにはなっていた。道を分かつとなると少々名残惜しい気もする。
だが結局、蝕の語るような使い手にはなれないというのが、タナハの結論だった。


その夜。
適当な宿に落ち着いたタナハは、一杯やろうと一階の酒場に降りた。

カウンターで飲んでいると、不意にざわりと店内がどよめいた。
有名人でも入ってきたのかと、興味本位に入り口を振り返る。
そこに立つ人物の姿に、彼はどよめきの理由を悟った。
入り口付近には、一人の女が立っていた。

南洋人の褐色の肌に、丁寧にこてをあてて縮らせ、ふくらませた髪は漆黒。両眼も、いっそあかるく輝いて見えるような、つやめいてよく光る黒だ。
しなやかな褐色の肢体によく似合う、背の開いた鮮やかな大判の柄の長衣を纏い、象牙や金細工を連ねた飾りを、耳から首やむき出しの腕、足首まで幾重にも重ねていた。
スカートに深く入ったスリットから、ちらちらと長い脚がひらめく。

異国情緒たっぷりの女の姿に、ヒュ、と店内からいくつか口笛が上がる。
濃く睫毛に縁取られた瞼をわずかに細め、笑みを含んだ流し目が店内を見回す。品定めする視線に、男客の間に軽い緊張が走った。
 彼女は酒をおごらせる相手を選んでいるのだ。一緒に飲んで気に入れば、ベッドまで付いてきてくれることだろう。
 選ぶのが彼女であることに、誰にも異存はなかった。安い女でないことは、誰の目にも明らかだった。美しさも、身につけているものも、目つき、しぐさのひとつに至るまで、最高級と呼ぶにふさわしい。
 タナハも他の客と同様、ぼうっと女に見とれた。
 選ばれるなどとは微塵も思わなかった。都には良い女がいるものだと感心し、この女に選ばれるのはどんな男なのだろうと、興味すら抱いていたのだ。
 なので、女が彼の方向で視線を留め、ゆっくりと近づいてきたときも、まさか自分に向かって来ているとは思いもしなかった。
 その意味に気付いたのは、彼以外の客のついていないカウンターまで彼女がやってきて、隣に座ってからのことだった。それほど決定的であってもなお、彼は数度、きょろきょろと周囲を見回した。
 男たちの、敵意と羨望の入り混じる視線にさらされ、彼はようやく、カウンターの向こうにいるバーテンダーに合図した。

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