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魔剣使い
官能リレー小説 - ファンタジー系

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魔剣使い 26

無敵の力の持ち主である気分は悪くないが、これでは気持ちの上でも採算がとれない。間違いなく得をしたと言えるのは、早漏が改善されつつあることくらいだ。

等々、考えているうちに、目的の場所にたどり着いた。


「お取り扱いは、ランクS相当の魔剣一振りということでよろしいですね。鑑定結果を明日の午後までに発行いたしますので、本日はお預けいただくことになります。こちらの書類をよくお読みになり、ご署名をお願いいたします。…はい、けっこうです。では預かり証をお持ちしますので、少々お待ちください」


書類を持って、店員が店の奥に消える。
気配が消えるのを待って、黙っていた蝕がとうとうしゃべり出した。
「…今、鑑定と申したか」
「しっ!人前でしゃべるなって言っただろ!」
「何の鑑定だ!もしや我のではあるまいな?そうなのか!?」
蝕の声が高くなる。
ついでに、鞘ごと机の上でカタカタと震えた。人間なら地団駄を踏んでいるところだ。
「売らぬと申したではないか!」
「うっ、売るんじゃねえよ。念のためだって、念のため。持ち物の価値は知ってた方がいいだろ?」
「? 何かおっしゃいましたか?」
奥から顔を出した店員に、タナハは笑顔で何でもないと手をふった。

「…とにかく!頼むから大人しくしてくれよ。異種退治の仕事受けるにも、ランクが分かってた方が都合がいいんだ。売るわけじゃないって」
「その言葉、まことであろうな?」
「まことまこと!」

何とか、鑑定のために店に預ける間は口をきかずにいることを約束させたころ、店員が預かり証を持って戻ってきた。



剣を預けて店を出たタナハは、のびをひとつして、久々の解放感に浸った。
多少気がとがめないでもないが、完全にだましたわけではない。売る気があるといっても、相応の値段がついたらの話だ。
地方巡りの実績があるとはいえ、その力の真価は使い手のタナハなしでは測れない。鑑定がどう出るかは未知数だった。魔石や刀身の造り、年代の古さから高値がつくことを祈るばかりだ。
「…とりあえず宿、探すか」

…正直な話、少しくらい希望より安くても、妥協する気はあった。
旅暮らしは嫌いではないが、まとまった金を手に入れて平和な田舎にでも引っ込みたいというのが本音だ。
一攫千金狙いの宝探しも、可能なかぎり安全を最優先していた。
異種退治の仕事にしても、相手に極力近づかずにすむよう、持っている呪物の使い方を必死で考えてこなしてきた。
だが、元々が市井のしがない道具屋なのだ。
ちょっとした冒険心も満たされると、あとはひたすら元の、剣や争いとは縁のない生活に戻りたいと思うようになっていた。

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