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魔剣使い
官能リレー小説 - ファンタジー系

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魔剣使い 25

解決策の見つからないままその後も幾度か同じことを繰り返し、二ヶ月が経った。

退治屋まがいの仕事を始めて三ヶ月。大々的ではないまでも、腕の良い魔剣使いとして地方では名が上がりつつあった。
魔剣を譲ってほしいという申し出も多く、盗難や強盗に注意しなければならなくなっていた。何しろ、魔剣の力を引き出せるというだけで、タナハは剣の使い方も知らない一般人だ。
蝕は、ひとたび振るえば無敵だが、そうそう気軽に地形を変えたり人間を消し飛ばすわけにもいかない。

魔剣を持て余しつつあったタナハのもとに、都で大きな競売が開かれるという噂が耳に入った。


「人の子の気配が多いようだな」
というわけで、さっそく都にやってきたタナハと蝕である。
もちろん、蝕は彼の思惑など知るよしもなく、大通りにあふれる生命の気配に、感嘆の言葉を洩らした。
人前でしゃべるな、とやかましく言って聞かせたためかやけに小声だ。タナハも、周囲に怪訝に思われないよう声を低めて応じた。
「そりゃあ、都だからな」
「都と申すと、人の国の王がおるのか?」
「いや、この国の元首は王じゃない。行政を司る国民議会の議長が国家の代表を兼ねてるんだ」
「議会政治が成立しておるのか。時代は代わったものだ」
まさか剣が人間の政治形態に興味を示すとは思わなかったので、タナハはおもしろがって話をつないだ。
「へえ、前回まではなかったのか?」
「小さな都市国家規模ならば王を戴かぬ国もあったがな。長くは続かぬが常であった。民草が自らを治めるには時が必要だが、戦乱の時代であったゆえ。賢き王や猛き将を戴く国が周囲の国家を平らげてしまうのだ」
「ふうん」
「平和の時が続いたのであろう。善きかな」
しみじみと、剣は語った。
「もっとも、どうやら人の子の魂の薄れたは、その平和の時代のためらしいが」
「そういや、今どきの女は魂の力が薄いって言ってたな。魔力とか、そういう意味か?」
「魔力もまた魂の力の一つの発露ではある。無関係ではないが、我が欲するは『意』の力だ」
「『意』」
聞き慣れぬ言葉に、タナハは眉をしかめた。
「個や自我と呼ばれるものだ。あらゆる種属の魂は、その底ではひとつらなりになっている。そこから顔を出した、他と混じいることのない部分だ」
「なんのこっちゃわからん」
タナハはあっさり考えるのを放棄した。蝕も、それ以上説明はしなかった。
「人の子は、他の種属のどれにも増して戦乱を好む性質なのだ。ゆえに、濃く強き『意』の持ち主は、人の子の場合、常に戦乱の中より生まれいでる」
「俺は平和が大好きだけど」
「だから汝の『意』は薄いのだ」
「薄いのか…」

付き合いもそろそろ三ヶ月になるというのに、タナハは魔剣に誉められた記憶がない。薄いの早いのとけなされてばかりだ。

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