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魔剣使い
官能リレー小説 - ファンタジー系

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魔剣使い 22

売るの売らないの、緑人だの補給だのという話ばかりで、お互い名乗ってもいなかったのだ。

「お前は?何て銘なんだ?」
「……我に銘はない。神代に我を鍛えし刀鍛冶は、我をただ魔剣と呼んだ」
「珍しいな。銘がない魔剣か」
彼は首をかしげた。
「じゃあ、今までの使い手は、何て呼んでた?」
「適当に男の名をつけて呼んでおったな。剣ではなく同属の男になぞらえて扱いたがる者が多かった」
「?」
「疑似体を構成し、日常に交合を繰り返さねばならなかったゆえであろう。女とはそのように考えるもののようだ」
「愛人扱いってことかな?そういうもんかね。じゃあ、どう呼べばいい?」
尋ねるタナハに、魔剣は少しの間考え込んだ。

「…一人、我に剣の銘をつけた娘がいた」
「へえ、何てんだ」
「『蝕』」
重々しく剣の語った名を、彼は繰り返した。
「しょく?」
「我が力の破壊痕を、天空の蝕の様子に似ていると申しておった」
「ああなるほど」
分かる気がする、とタナハは深く頷いた。
「で、お前はその名前を気に入ってるわけだ」
「………まあ、その通りだ」
あまのじゃくな剣は、気に入ってる、などと素直に口にするのを数秒ためらった様子だった。
いかにも不承不承といった体での肯定に、タナハは笑った。

「いいぜ。じゃあ、蝕。これからよろしく頼むわ。一緒に一儲けしようぜ」
「一儲け…まあよい。我を手にした以上は、汝の行動がいずれ救世につながるは運命」
物騒な剣のせりふに、タナハは顔をしかめた。
しかし目を持たない剣はそれに気づかずに、のんきにこう続けた。

「我が使い手、タナハよ。よろしく頼む」



山を一つ越えたあたりで、前方からやってくる男達に出会った。
武装した一般人の一団だ。先頭の一人が、タナハに声をかけた。

「旅の方。あんた、この先の町を通ってきたのかい?」
「いや、南から来て、いましがた街道に合流したところだよ」
タナハはけろりと嘘をついた。
町で起こったことは、広言しない方がよいと判断したのだ。
緑人退治については良い。だが、二人の女のことがある。

「そうか…」
「何かあったのか?」
「ああ、町がバカでかい緑人に襲われてな。おれたちは隣町に避難したんだ。都の派遣兵が来るまでそこで待ってろと言われてたんだが…」
「そりゃ災難だったな。しかし、どうして兵を待たないでここへ?」
男たちは顔を見合わせた。

「…ゲルダさまのご無事を確かめに」
「ゲルダさま?」
「半年前に都から派遣されてきた魔法使いだ。逃げ遅れたものがいないか、確かめに出て行ってしまわれて…朝までに戻ると言われたのに、お帰りにならない」
あの娘のことだろう。町民にずいぶん慕われているらしい。

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