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魔剣使い
官能リレー小説 - ファンタジー系

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魔剣使い 21

貴重な呪物・替え玉人形シリーズの一つ『マクンガくん』が、もったいなくも粉砕されるのを、彼は緑人側の視点で見ていた。

正面からいって、またとどめを刺せなかったら…彼が案じたのはその一点だ。
剣は脳天気に、エネルギー補給したから、一撃で相手を消滅させるくらいたやすいと言ってのけたが、どこまで信じていいものかわからない。
確実に頭部を抉る方法が必要だった。

血を与えることでその人間の姿と命の気配をコピーする身代わりの人形を囮に、彼は壁伝いに緑人の側面に移動した。

「面倒なことをするものだ…」
「しかたないだろ。っていうか、正面から行ったらああなってたんじゃねえか」

著名な人形師の手からなる高価な呪物の無惨な有様を示しながら、彼は剣を構えた。
ふいに横ざまから声がしたこと驚いたのか、慌てたふうに緑人の頭がこちらを向く。
黒い巨眼は、状況が認識できずに無邪気に見開かれている。
認識する暇を与える義理は、どこにもない。反射的にか、しなる枝が一本、先端をもたげる。
だが…
「遅えよ」
待つ義理もなかった。彼は剣を中空に振り上げた。



「お前、すごいな…」
「よくわかったであろう。敬うがよいぞ」

隣町へ急ぐ山道でのことだ。
眼下に広がる町の全景に、彼はため息をついた。正確には、魔剣の残した破壊痕に。
地形を変える一撃だった。
緑人の姿は、力の範囲からそれたわずかな部分を残して跡形もなくなっている。
その立っていた地面、背後の山までも、巨大な何かにすっぱりと切り取られたように、なめらかな傷跡を残していた。
彼が剣を振るった位置から何キロも先までそれは続いている。

吹き飛んだとか、爆散したというものではない。
剣の軌跡の延長線上にあるものは、消滅していた。塵も残さず。

これと似た魔法が、かつて使われたという言い伝えがある。事実かどうかも不明の、おとぎ話めいた伝説だ。
その力が通過したあとには、人も魔も神霊も、何も存在できなかったという。聖も邪も火も水も、あらゆる属性の区別なく、全てを消滅させる魔法。

考え込む彼に、剣が小声で話しかけてきた。
「…まだ我を売る気でおるのか」
「え?いやまさか。俺じゃないとあんだけの威力は出ないっていうんだろ?」
我に返った彼は、あっさりと否定した。
「魔属の退治でもして、礼金とった方が割がよさそうだ。力貸してもらうぜ」
「いちいち金の話になるのは、はなはだ不本意ではあるが…人助けと申すならばそれもよかろう」

「威力に定評がつけば、売り値も上がるだろうしな…」
「何か申したか」
「いやいやいや」
呟きを聞きとがめられ、彼は慌ててなんでもないと否定した。
それから、そういえば、とあることに気づいて話題を変えた。

「タナハ、だ」
「今なんと?」
「名前だよ。ヤーマー・タタナハル。みんなタナとかタナハって呼ぶ」

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