PiPi's World 投稿小説

魔剣使い
官能リレー小説 - ファンタジー系

の最初へ
 18
 20
の最後へ

魔剣使い 20

だが一瞬のち、
「あほか!」
彼は信じられない思いで剣を見た。
「阿呆とは何だ無礼者」
「無礼がどうした。いいか、この女たちが目を覚ます前にカタつけて逃げるんだよ」
「なにゆえ逃げる。あやつを倒せば汝は英雄であろう」
「英雄だろうが何だろうが、こいつらにしてみりゃ強姦魔じゃねえか。訴えられて捕まっちまうわ」
魔法使いの娘は役場勤めだというし、女戦士は言わずもがな。
連れて歩くなどとんでもない話だ。目を覚ましたとたんに、訴えられるどころか命が危ない。
彼はぶつくさ言う剣を掴んで、夜の帳から抜け出した。




その緑人は飢えていた。
本来ならば、光と水が彼らの糧だ。飢餓とは無縁の種属だった。
だが彼は大きくなりすぎた。
年を経るうちに仲間を喰らい、喰らわれ、混じり合いながら、小さな山と化した体はすでに一人の緑人とは言えなくなっていた。
体のどこかが、常に飢えては死に瀕している。

生と死とが彼の体の上で常に入れ替わる。
体を保つために、より高い栄養が必要になった。光と土で培われる、緩慢で優しい糧では足りない。

最初は小動物の死骸から。
しだいに大きくなり、量も増し、やがて山から動物の姿はなくなった。
飢えに耐えかねて、移動を決意した。
知性あるヒト属の集落が近くにあることは知っていた。
彼らは他の動物と違って火や刃を使う。手出しは最後の選択だったが、夜の襲撃はうまくいった。
炸裂する炎に幾度も邪魔され、何人かは逃がしてしまったが、それも彼を滅ぼすほどの力ではなかった。
だが、人間の集落を襲うのは、そうたびたびできることではない。警戒する人間は手強いものだ。
再び山に戻り、飢えを抱えて時を待つしかない。

だからこの夜、何も知らぬげに現れた新たな糧を、逃がす手はないと彼は考えた。

まさか、かつてないほどの抵抗に遭おうとは、思いもしなかった。
体の何割かを、一度に削り取られ、痛みはないが、怒りを感じた。

目を回して、気付くと人間の姿は消えていた。
だが、逃亡する足音は聞こえない。すぐそばに潜んでいるに違いない…

彼にとっても恵みである朝日が、昇り始めたちょうどそのときだ。
彼の目の前に、求める人間が姿を現した。
刃を振るって、見えぬ力で彼を傷つけた人間だ。
光のもとにある人間の、なんと小さくか弱いこと。そして愚かなこと。こうして目の前にふらふらと現れて、二度、刃を振るう暇が与えられるとでも思うのか?

彼は彼の無数の腕を、町の建物を粉砕した速さでもって人間にのばした。
食欲よりも怒りに目がくらんでいた。
力無く押し潰れる小さな人間の姿に、彼はいたく満足を覚え、目を細めた。



SNSでこの小説を紹介

ファンタジー系の他のリレー小説

こちらから小説を探す