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魔剣使い
官能リレー小説 - ファンタジー系

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魔剣使い 3

よい情報源に恵まれて、何度か良い目をみた。
そうして、魔剣の眠るといわれるこの場所にもやってきたのだ。

さすがに、高ランクの魔剣があるというだけあって、ここにたどりつくまでのトラップや魔法仕掛けの番人のレベルも高かった。
戦闘の心得のほとんどない彼は、身代わりアイテムだの魔除けの護符だのをフル活用してここまで来たのだ。
そういった呪物は高価な上、使用に回数制限があるものも多い。
だが、Aランク以上の魔剣の存在が確実ならば、使う価値もあるというものだ。

「失格だ」
「は?」
「汝は我が使い手にふさわしい人の子ではない。このような俗物になにゆえ我が戒めを解くことができたのか…」
「俗物で悪かったな」
率直な剣の悪口に、彼は顔をしかめた。
「我が代々の使い手は、常に勇者であった。清廉にして恬淡、慈愛にあふれ正邪を見抜く…純粋破壊の魔剣を振るうにふさわしい人格でなければならなかった」
剣は、ありし日を思い出すように、静かな口調で語った。
「ふーん」
「だが、一度目覚めた以上、時を戻すことはできぬ」
剣の口調は本当に、ものすごく不本意そうだった。
「気は進まぬが、汝が我が使い手だ」
「使い手?何で?心配しなくても、ちゃんと立派な剣士の手に渡るってば」
「現世が我を必要とし、勇者の手で目覚めさせるが常。我がこうして目覚めたということは、世が我が力を必要としたということだ。汝もまた運命に選ばれたのであろう」

勇者だの運命だの、次元が違っているとしか思えない発言に、彼は肩をすくめた。
「悪いけど、俺は剣士じゃないんだよ。剣なんか持ち方も知らないっての」
彼は丁重に辞退したつもりだったのだが、剣は聞いてはいなかった。
びっくりしたような声が上がる。

「<俺>?汝、今おのれを<俺>と申したか?」
「申したけどそれが何」

「なんと!汝は男か!」
「見りゃわかんだろうがよ」
「わかるわけがあるまい。我は剣だぞ。剣に目はついておらぬ」
「ああそうね…」
それを言うなら口だってついていないのだが、つっこむ気力は起きなかった。

「先の我が使い手は女子であった。その前も。その先代も。我を目覚めさせ、我を振るうことができるのは、いかなる種属においても、女のみであったのだ」
「女好きの剣ってわけか」
「そういう問題ではないわ!」
心外そうに剣がわめく。
彼は少々うんざりして、適当にいった。

「わかったわかった。女の子に持ってほしいんだな?女剣士に買われるように手を回してやるよ」
「だから売るなというのに!」



外は、すでに夜闇に沈んでいた。
剣がうるさくわめくので、男は番人に見つかるのではと気が気ではなかった。
しかし、魔剣と使い手(仮)の組み合わせの前に番人の仕事はない、という剣の言葉どおり、彼は嘘のようにあっさりとダンジョンを抜け出すことができたのだった。

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