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魔剣使い
官能リレー小説 - ファンタジー系

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魔剣使い 2


見直してみたところで、剣は剣だった。
魔剣としても平凡な見た目だ。魔石がついている他は、装飾もほとんどない。
業物ではあるのかもしれない。刃は鋭く光っていた。
だがそれ以上のものではない。どちらかといえば造りの華奢な、小柄な者向けの片手剣だ。
「剣がしゃべって何がおかしい。汝はしゃべる剣に会ったことがないのか」
だが、そんな普通の見かけを裏切って、剣はますます元気にしゃべり出した。
「あるかそんなもん!」
思わず言い返してしまって、男は頭を抱えた。
どう考えたって幻聴である。幻聴に言い返すなんてどうかしている。
この石室に到るまで、番人としてうろついているものたちに見つからないように、ひたすら息を殺して緊張しっぱなしだった。
緊張がピークに達して幻聴が聞こえてきたのだ…
「幻聴ではないぞ」
祈るような彼の考えを、当の声がきっぱり否定した。
「物を語る剣に出会ったことがないとは面妖なことだが、そんなことはよい。無口な剣もおるゆえな。だが我はわざわざ汝のために、現世の人の子に聞こえる波長の声を、出してやっておるのだ」

確かに声の言うとおりだった。
頭の中に聞こえてくるような感じではない。
空気を震わせ耳を打ち、静かな室内でしっかりエコーまでかかっている。

「ちょっ、マジで剣がしゃべってるのか」
「疑い深いにもほどがあるぞ。まあよい。質問に答えよ」
「質問?」
男が首をかしげると、剣の声に苛立ちが混じった。
「少しは話を聞かぬか。だから、なにゆえ我の戒めを解いたのだ」
「なにゆえって言われてもな。魔剣が欲しかったからだけど」
「なにゆえ我を欲する」
剣は急に声を低め、厳かな調子になった。

「えーとそうだな。最近異種属の侵略が激しくなってきてよ」
「ふむふむ」
「異種の中には、魔属とか神霊属とか、魔法や呪物でしか戦えない連中も多いわけ」
「なるほど。それで?」
剣は、やけに熱心に彼の話を聞いていた。
何かを期待するように続きをうながす。
人間だったら、身を乗り出してきていただろう。少々引き気味になりつつ、彼は言った。
「だから、ランクの高い魔剣の買い取り額が、今高騰してんだよ」

剣が一瞬、沈黙した。

「…すまぬが、よく聞き取れなかった。もう一度言うてくれぬか」
「異種属専門の退治屋や兵団なんかに、魔剣がすっげ高く売れるのよ。Aランク以上なら、オークションで一生食ってける値がつく」

「……汝は、その退治士や兵隊ではないのか」
「? 全然違う。ただの元・道具屋だもん」

彼は宝探しで一攫千金を夢見る一般人である。
魔属の侵入で過疎化した村で道具屋を廃業し、売れ残った在庫の有効利用を思いついた。
あまり流行らなくなった補助的な呪物も、ふんだんに使えるとなると役に立つ。

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