PiPi's World 投稿小説

魔剣使い
官能リレー小説 - ファンタジー系

の最初へ
 10
 12
の最後へ

魔剣使い 12

崩れた壁の角に女たちを引きずりこんで、彼は包みの封を解いた。
中身はガーゼ状に透ける黒布だった。
付属の骨を壁に突き刺し、簡易テント型に三人分のスペースをとって広げる。
「これで何とかしのげりゃいいが…」

『夜の帳』と呼ばれる呪物だ。
隠蔽の魔法と同じ効力があり、ベールに覆われた場所は、見るものの認識から外される。
いるとわかっている者には効力がないので、こうして一旦、完全に相手の意識から外れなければならなかった。
もちろん、万能ではない。
音や気配も隠してくれる優れものだが、封をやぶってから数時間程度しか効果がもたない。
時間内でも、日光にさらされると溶けだしてしまう。
もって夜明けまでということだ。

木のうろが風にざわめくような、緑人の咆吼が響く。彼は身を縮めた。

「魔法力の回復ってどれくらいかかるんだ?」
くそ、と彼は悪態をついた。
「あとはもう、この魔法使いに何とかしてもらうよりないぞ」

間近で落ち着いてみると、魔法使いはとても若かった。
まだ娘と言ってもいいような年だ。顔にかぶさっていた髪をよけてやると、小さな白い顔があらわになる。
魔女種に見誤ったのが申し訳なくなるほど、普通の人間の娘の顔だった。むしろ造作は整っていて、小動物を思わせる愛らしいファニーフェースだ。
目をかたく閉じてぐったりとした姿がひどく華奢で、痛々しい。

「なあ、お前。本当にもう無理なのか?何とかもう一発さっきのが出せりゃあよ」
「……無理だ」
もし人間だったらうなだれて首を横に振っていただろう。剣は力なくそういった。
「口惜しい…使い手が女であれば、このような無様なことにはならぬものを」
「そう言われてもだな」
「これ以上はうつし身を保つこともままならぬ」
魔石の表面に、ピシ、と亀裂が走った。うわっ、と彼はあわてた。

「待て!待て待て!しっかりしろ、もったいない!……じゃなくて。この女が使ってもだめなんだろ?」
「使い手は既に汝と決まってしまった。我を振るうことができるのはもはや汝のみ」
「でも、補給するっつってたろ?どうやるつもりだったんだ」
尋ねると、剣は少しの間黙った。

「使い手が女であれば、すぐにも魔力の充溢がかなうのだ。初代よりこれまで、男が使い手であった例しはなかった。だが方法はわかっておる」
剣は続けた。
「必要なのは、女だ。それも複数の女でなければならぬ。多いほどよいが、一人では足らぬ」
彼は顔をしかめた。

「いるじゃねえか」
複数の女。ここには二人の女がいる。

SNSでこの小説を紹介

ファンタジー系の他のリレー小説

こちらから小説を探す