モンスターハーレム 第2章 319
いったいどんな鍛え方をしてれば、こんなことができるんだか。
そこにすかさず入ってきたローの右パンチ。
すばやくバックステップでパンチをかわして距離をとろうとするが、ここぞとばかりにくっついて離れない。
「ぬっ、おっ、それならっ・・・!」
引いてダメなら押してみろ。
逃げられないと悟ったオレは、反撃に出た。
懐に潜り込み、そのまま渾身の体当たりでぶちかます!
ドンッ・・・!
「ぐっ・・・!?」
「ぐっ・・・おあ、ああぁぁぁあッ!?」
しかし吹っ飛ばすつもりでやった体当たりは、吹き飛ばすどころかわずかにローをよろめかせただけ。
目論見の外れたオレに待っていたのは、ローの怒りの鉄拳だった。
「ぶほぉうッ!?」
再び宙を舞い、地べたを転がることとなったオレ。
く、くそっ!?さっきから一体何なんだよっ!?
素手で剣を防いだり、体当たりしても岩みたいに動かなかったり!
化け物じゃあるまいし、攻撃食らったら少しは怯めよっ!?
「・・・『化け物』?」
あまりの不条理に心の中で悪態をついたその時だ。
オレはここに至ってようやくローの非常識な防御力の正体に気づいた。
「ロー!テメエ・・・『封身開放』を使ってやがるな!?
それもほんの一瞬・・・身体の一部分だけっ!」
「・・・ご名答♪」
オレの質問に、ローは不敵な笑みを浮かべてそう答えた。
何のことはない。ローは強力な魔物を人の身に封じる『人化の法』を逆に利用していたのだ。
攻撃が食らう前に命中箇所を予測し、そこだけ『封身開放』を使い、魔物の身体に戻して防御する。
魔物の身体は人間の身体より頑丈だから、ダメージは最小限で抑えられるって寸法だ。
おまけに一瞬だけしか元に戻さないから、身体に不調は起こらないし、相手にも気づかれにくい。
人化の法の性質を逆手に取った、考えられた技術である。
しかもタチの悪いことに、種明かしをされたところで本人は痛くもかゆくもなく、相手には精神的ダメージを与えるおまけつきだ。
何しろオレがこれまで戦ってきた魔物娘たちは、本来の姿をさらす『封身開放』を行うとき、みないちいち正体を明かしていた。