モンスターハーレム 第2章 290
「…アイツはな、俺の幼馴染みだ」
「幼馴染み、ですか…?」
「ああ。魔王様の奥様の一人、ルクレシア様一人娘ルーティア。強靭な魔力を持ちながらも全く制御出来ずに暴走してしまい、結果『居なかった』ことにされた、最悪の元魔王継承者候補」
「そ、それって…」
かなりヤバい方なのでは…?
先程より足音は近くなっている。
「四肢に封印の枷を施し、この最下層に強制封印することでやっと落ち着いたらみたいだが…」
「おかげでね、『外区』から門番扱いよ。毎日人間相手は飽きるわよ?」
いつの間にか、足音は無くなっていた。
トルナ達からほんの数メートルほど先に、その女性はいた。
美しい銀色の髪を持つ美女。整った顔には笑顔が浮かんでいたが、トルナにはそれが恐ろしく思えた。
不思議な事に、彼女は全裸であった。そして手足には銀色の甲冑。複雑な模様が描かれている。
「はじめまして、お嬢さん。私がルーティアよ」
にっこりと微笑んだルーティア。しかしトルナはそれに応えることは出来なかった。
ラグの暴走した時の比では無い恐怖に包まれ、例えるならそれは『死神の微笑み』に見えたから。
ローが何のために最下層まで来て、何のためににルーティアに会いに来たのはわからない。
けれどそれは、トルナにとってもラグにとっても、新たな混乱の始まりに過ぎなかったのだ……。
※
その頃。何も知らないオレはソウルイーターに精気を吸い取られつつ、狭霧を探していた。
狭霧に会わせて、彼女の身の潔白を証明したいところだが、いかんせんこの迷宮は広すぎる。
地図があるので迷いこそしないが、特定の相手を見つける機能があるわけではないので、結局自分の足で探さなければならなかった。
「ここにその人間の女がいるのね?」
「・・・だからアイツの名前は狭霧だっつってんだろーが。
それといるかもしれないっつーだけの話で、アイツの正確な居場所なんてオレにもわかんねーよ」
オレの冷静なツッコミを無視し、早く開けろと無言で命令してくるソウルイーター。
人間=自分の敵の構図の下、不意打ちを警戒するのはまだいいが・・・それを食らう役目をオレにさせるとはどーゆー了見だ?
くそう、腹いせにまた母乳しぶかせながらイキ狂わせてやりたい。
しかし狭霧の身の潔白を速く証明したいし、何よりここでヤッたら、オレ限定のエナジードレインが解除されるかもしれない。
コトが終わったら覚えてろよ?
オレは心の中でソウルイーターへの意趣返しを誓うと、ノブに手をかけ、扉を開いた。