モンスターハーレム 第2章 286
しかしその答えは通路の奥から聞こえた。
「ここは最下層の一廓、通称縛りの回廊。…お前らなんでここにいるんだ?」
「っ!!……ロー、様?」
通路の先から出てきたのはローであった。竜人姫である彼女はラープラたち反対派から見れば先陣を切る英雄。即座に畏まるが、ローはそれを制した。
「ここが禁断の地最下層…ですか」
「ああ、広大な地下迷宮愚者の迷宮、約半分を占める最下層区画だ」
「聞いたことはありましたが、それほどとは…」
ラープラもニオルドも。噂程度でしか知らない最下層。
二人とも、まさかそこまで逃げていたとは思わなかった。
「まぁ外区と内区を繋ぐ最後の砦だからな、広いのは当たり前けど。それより何故お前らがいるんだ?たしかサークんトコのガキだろ?」
ガキ呼ばわりされ、少しムッときたが、竜人姫からすれば二人共まだまだ未熟な事をわかっていたので、ラープラは怒りを押さえた。
「我等は…あの人口魔王の魔手から脱出してきました」
ラープラはこれまでの事をローに全て伝えた。戦士にとって英雄であるローは疑うことなく頼れる存在だからだ。実際には、ローはラグとは敵対してはいないが、味方としてもいない。まさに中立の立場である。
相談するには良かったのだ。
「ふーん、なるほどね。お前さん達がアイツを嫌うのはよくわかった。けどさ、それより…」
ローは暫く通路の奥を見つめて呟く。
「…遅かった、か?」
「ロー、様?」
「…ん?あぁいや、なんでもない。それより気になっていたんだが、ニオルド」
「は、はい!!」
不意に名を呼ばれてニオルドは緊張する。
何せ相手は英雄だ。何か不都合があったのか…?
「お前、何を背負っているんだ?」
「……へ?」
予想外の質問に、ニオルドは少し困惑する。ニオルドが背負っているのはサイクロプスのトルナ。今は気絶している。
「…あやつの、人口魔王の僕の一人です。名はトルナと」
「ふーん。そのトルナつー娘、サイクロプスだろ?」
「は、はい。確かにそうですが、何故ロー様がご存知で…?」
不思議そうに尋ねるニオルドに、ローはニヤリと笑う。
「そりゃな、トルナってヤツから聞いたのさ。…なぁ?」
ニヤニヤしながら、ローは後ろに居た『誰か』に問いかける。そこに居たのは…
「…なっ?!」
申し訳なさそうに出てきたのは、間違いなく「トルナ」だった。
では、ニオルドが背負っているのは……?