モンスターハーレム 第2章 25
大きなアドバンテージを得たナナリはさらに追撃しようとして………
「――っ?!」
さらに跳躍してその場から逃げる。直後、石の祭壇は氷柱へと変わっていた。
「………氷帝か」
ナナリが呟くと、魔物の群れを二つに割るように少女がナナリに近づいてくる。
やや低めの身長に煌めく銀髪。純白の肌は雪より白く。
白の毛皮だけが妖しい裸身を覆うのみ。
灰色の瞳は、真っ直ぐにナナリを睨む。
―氷帝、シュアナ。オルゾスの元部下である。
「……ふん、禁忌に従う家畜。オルゾス様を返してもらおう」
冷めた声。下級兵士程度なら凍り付くほどの魔力が乗せてあるがナナリは怯まない。
「ここにはいない、としか言えないな」
「……そうか。なら――」
シュアナが右手を上に上げて……
ナナリは駆け出す。
「死ね」
ナナリが駆け出すと同時に、シュアナが右手を振り下ろす。瞬時にナナリのいた場所は幾つもの氷の柱が貫いていた。
「――ふっ!!」
接近したナナリは蹴りを見舞うが、シュアナは左腕に氷の楯を出現させて塞ぐ。さらにいつの間にか右手には氷の長剣。しかしシュアナがそれを振り下ろす前にナナリはバックステップで退避した。
さらにナナリはまたもやダガーを投躑。
だが…
「……ふん」
楯を軽く振ると吹雪が現れ、ダガーを氷で覆う。
ダガーはそのまま失速し乾いた音と共に地面に転がる。
「……流石は氷帝。一筋縄ではいかない、か」
「はっ。アサシン風情が良く言う」
このままでは決着が着かない。
さて、どうするか…?
ナナリがそう考えた時だった。
邪妖精(ダークエルフ)としての予感なのか。
それともナナリ自身の能力なのか。