モンスターハーレム 第2章 213
肉に食い込むほど深く刻まれた傷は1分も経たないうちにきれいになくなってしまった。
あるのはそれが幻でないことを示す、うっすら残る線だけだ。
よほど驚いた顔をしていたのだろう。ローは大笑いしながら、回復の種を明かしてくれた。
「あっはっは!驚いたかい?オレはドラゴンの血を引いているからね。
その辺の魔物よりタフさには自信があんのさ」
「・・・おいおい、タフネスにもほどがあんだろ」
「大丈夫大丈夫。さすがに首を斬られたり、心臓突けばちゃんと死ぬから。
・・・ま、そう簡単にはやらせないけどね」
すろとローの両手から水色の鱗が生え、人間の腕から化け物の腕へと変化していく。
腕だけを封身解放したのだ。部分解放とはまた高度な技術を見せてくれる。
「さぁ、始めようか?できれば1対1が希望だけど、何なら1対4でもかまわないぜ?」
あくまで余裕の笑顔でオレたちを挑発するロー。
くそっ、余裕こきやがって・・・!しかしコイツは厄介だ。
どんなダメージからも回復できるということは一撃必殺で決着をつけるしかない。
幸い、相手は腕試しくらいに考えているが、それでも弱点はガードするだろうし、何がきっかけで殺し合いになるかわからない。
何より相手はドラゴンの血を引いていると言った。
おそらく純粋種ではないということなのだろうが、それでも十分な脅威だ。
・・・どうする?どうやってあの女をブチのめす?
逃げるなんて選択肢は最初からない。
今オレの頭にあるのは、ノシたあの女を言いようにこき使い、喘がせることだけだ。
物理的な攻撃が効かないとなると、後は魔法を使うしかない。
かと言って魔法が使えそうなのは巫女でもある狭霧くらいしか・・・。
「おいッ、おまえら!ここで殺し合うのはかまわんが!
もしミミ様に何かあってみろ!
その五体、八つ裂きにして食らってやるからな!?」
そんなとき、視界の端でミミを守りながら怒鳴り散らすシュアナの姿が目に入る。
彼女とその背後のミミ、ミルフェのまわりには、薄い水色のベールのような幕が形成されている。
あれは・・・結界か?アイツ、魔法なんて使えたのか。
それを見たオレの脳裏にある名案が浮かぶ。
シュアナは生意気で非協力的だが、使いようによっては戦力となる!
その作戦で十分勝機があると見たオレは、ローに向かって反撃を開始した。