モンスターハーレム 第2章 181
「しかしロー様、今まで最深部にいたのでは……?」
やや冷や汗を流しながらもサークは問いかける。
…と言うのも、体育会系のサークはまだ魔王が健在の頃、ローに幾度も勝負を挑み、その数だけ膝をついていたのだ。
今では『師と弟子』に近い。
「まーねー。けど、最近魔力の流れがおかしくてね、ちっと調べていたんだが……」
ローはラグのことは知らない。妙な魔力を持っている存在は感知してはいるが、何であるかはわかっていない。
「禁忌については、詳細は私が話した。……無論、貴様の状態もな」
「…禁忌、だと?」
ローの言葉にシュアナがにやりと嘲笑う。だか、サークはシュアナの一言に眉を動かした。
「……シュアナ。ラグを、禁忌と呼ぶか?」
低く、魔力が乗せてある「言葉」。リプトは背筋が凍るのを感じる。
元反対派同士とはいえ、元々『凶将』と『氷帝』はあまり仲が良くない。水と油、もとい火に油の状態である。
「禁忌を禁忌と呼んで何が悪い?……堕ちたな『凶将』。今では醜い禁忌の下僕か」
「……………」
正直な話、リプトは逃げたいが逃げることもできない。
「二度は言わないぞ、氷帝」
「二度も言わなくていい。『女』のサークの声は「艶」があるからよく聞こえる」
次の瞬間、リプトには何が起きたかわからなかった。
気がつけば轟音と共にシュアナを切りつけたであろうサークは、自らの剣を地面を切り裂いた状態で硬直していたのだ。
攻撃を仕掛けたサーク本人も何が起きたかわかっていないようである。
「いけないなぁ。短気は損気。前に俺が言わなかったかい?」
腕を組んだまま、ローが軽い口調で言うと、サークはゆっくりと剣を引いた。
「……指弾、ですか」
サークの言葉でリプトはやっと理解できた。
恐らくローは、サークが剣を振りかざした瞬間、指から高速で礫を弾いて弾丸とし、剣に直撃させることで剣激の軌道を変えたのだろう。
それを手軽くやってのけたのだ、ローは。生半可な技量ではない。
「……フン、命拾いしたな」
「それはどちらかな?」
「あー、ホレ。喧嘩すんなよ」
あくまで軽く。ローは二人の喧嘩を中和した。それをリプトはただ眺めるしかできない。
ただ黙って仲裁するだけではまずかろう、とローは話題を開く。
「それよりな、その噂のラグ君は何処にいるかわかるのか?」
「い、いえ。それが……」
口ごもるサークに、そうかと答えるロー。
「仕方ない。こっちで探すしかないな」
言うなりローは壁に手をあて、魔力を僅かに込めて……
「妙な魔力は……内区か」
「た、探査魔法ですか?!」
「うんにゃ、ただの魔力感知」
「うそ……」