モンスターハーレム 第2章 135
逃げようとすれば連中の巻き添え食うか、とっつかまるか。
しかしこの場にとどまっても・・・。
そう思っていたそのときだった。
クイ、クイ。
「・・・ん?あ、おまっ・・・!?」
え、と言いかけてあわてて口をふさぐ。ここで大声を出したら命が危険だ。
オレは大声を飲み込むと、久々の設定隠し通路から顔を出す小さな少女を見下ろした。
それは反対派の封育樹から生まれた4つの果実から生まれたなぞの名もなき少女であった。
ここ、サルスベリの研究所だろ!?
アイツ、ここには仕掛けなんてないとか言ってたくせにバッチリあるじゃねえか!?
だましやがったな、あのクサレアマ!つーか、何でコイツがここに?
いろいろ言いたいことや疑問が浮かんで言葉にならない中、彼女はクイクイと袖を引っ張る。
「パパ、こっち」
「こっちって・・・ここから逃げろって言うのか?」
少女は首を振って肯定すると、再び袖を引っ張り出す。
チラリと後ろを見れば、すでに臨戦態勢を整えたお三方が今まさに命がけの殴り合いをするところであった。
「・・・喜んで行かせていただきマス」
オレは一瞬の迷いも見せることなく少女の後をついていく。
ちなみにこの後、オレの姿がいなくなったことで3人はまたケンカをおっぱじめることになるのだが・・・まぁこれは余談だろう。
部屋を完膚なきまでに破壊しつくされるようなケンカをする連中のことを余談で済ましていいものかと思わなくもないが、毎日あんなケンカをするような連中を止める勇気はオレにはない。
やるならそれだけの力と根性のあるヤツがやってくれ。
ズリ・・・ズリ・・・。
狭い通路を腹ばいになって進む。すると前から四つんばいで歩く少女が声をかけた。
「パパ、大丈夫?」
「・・・ああ、大丈夫だ。しかしその『パパ』ってのは何とかならねえ?」
あんなすさまじいケンカに巻き込まれるなら、こんな狭い通路も天国のように感じる。
しかし封育樹から生まれた、オレの子かどうかもわからない子供に『パパ』呼ばわりされるのは、どうにも抵抗がある。
少女は進むのをやめ、しばらく考え込んでいたが。
「パパと呼ばれるのは、イヤ?」
と、何とも答えづらい質問を返してきた。
素直にそうですと言いたいが、自分を父親と思ってる子供相手にそう言うのはどうしても気が引ける。
「あー・・・いや、その・・・な?」
「それならお父さんって呼べばいい?」
逡巡している間に突きつけられた無邪気な質問。
しかし悪気がない分、かなり凶悪でタチが悪い。
この時点でオレの負けは決定だった。