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デメリアの門
官能リレー小説 - ファンタジー系

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デメリアの門 8





光の噴水発生地の調査のための人員募集。
この事態に村はもう夜であるにもかかわらず、喧噪が絶えなかった。
あの現象はいったい何だったのか。
危険はないのか。よくないことの前触れではないのか。
もしかしてすごい価値のある、お宝なのではないか。
不安と期待が入り混じり、さまざまな憶測が村中を飛び交う。
中には目先の欲に捉われ、抜け駆けしようとするものまでいる始末だ。
村中が混沌とする中、アクセリとガルトは宿屋の一室であの光の噴水のことで話し合っていた。

「・・・あの光の噴水のこと、どう思います?」
「間違いなく、あのバカが関係していると思う。あまりにもタイミングがよすぎる」
「ですよねえ。バカだバカだとは思っていましたが、まさか旅に出た初日からこんな大問題を引き起こすなんて・・・」

アクセリが思わずついたため息に、ガルトも無言で首肯する。
あのバカ、とはブルックリンのことである。
彼が行方知れずとなって1日もしないうちにあの事件である。
ブルックリンの性格、アクセリの集めた情報など整理すれば彼があの騒ぎに関わっていることは間違いない。
大方、金儲けの気配を感じて行ったはいいが、自分の手に余るようなことが起きて帰れなくなった・・・といったところか。
彼は森で暮らしていた時から、しょっちゅう問題を起こすトラブルメイカーだった。
冒険者ごっこでヘビにかまれたりハチに刺されたりして、ひどいときは生死の境をさまよいそうになったときもある。
他にも鳥の卵やおいしい木の実を取ろうとして木から落っこちたり、野犬に追われる仲間を助けようとして自分が追われ、迷子になって帰れなくなったり・・・。
悪いヤツではない。
それはいいのだが、目先のことしか考えられず、しかも頭で考えるより先に身体が動いてしまうタイプなのでよくこういう事態に陥ってしまうのだ。
さすがに旅に出るとあって、少しは慎重になってくれるかと思っていたのだが・・・。
これは勝手にブルックリンに期待した2人の完全な失敗であった。
だがいつまでも失敗を嘆いていても始まらない。2人は気を取り直して今後のことを話し始めた。
お題は「ブルックリンを助けに行くか否か」である。
同じ釜の飯を食った仲なのだ、できれば助けに行きたい。
とは言え、今回の騒動はこれまでのものとはレベルが違う。
おまけにこの旅は大人になるための儀式だから、森の仲間たちをあてにすることもできない。
自分たちだけでどうにかしなければならないのだ。
正直、彼を見捨ててしまうほうが安全でベストだと言わざるを得ない。
効率と安全を考え、ブルックリンを見捨てるか。
義理と人情を選び、あえて危険に近づくか。
2人は悩みに悩み抜いていた。
そして2人の出した答えは。

「まあ、行くだけ行ってみましょう。私たちの手に余るようなら調査団に任せればよし。
 私たちで解決できるならそれでもよし」
「妥当だな」

・・・と、何ともあいまいな発言である。
第三者が見れば、仮にも同じ森で育った仲なんだから、もっと必死になって助けに行かないのかとも思われるだろう。
だが彼らにとって、これでも十分義理と人情を優先して動いているのである。
非常事態において、もっとも気を付けなければならないのは二次災害だ。
おぼれた人を助けに行って自分もおぼれて一緒に死んでは元も子もない。
ましてはこの世界は魔物や盗賊がはびこる危険な世界だ。
ちょっとした油断や判断ミスが死につながる。
何事も自分の力量をきちんと量らなければ生きていけないのだ。
無鉄砲なブルックリンはともかく、この2人にはそれをするだけの冷静さがある。
むしろ見捨てて行かなかっただけ、まだ優しい部類に入るだろう。
今後もそうだとは限らないが。
はてさて、こうして2人は調査団に参加し、光の噴水が起こったとされる神殿跡地に向かうこととなる。
あの光の噴水は何だったのか?
そこにいた冒険者や邪教徒たちはどうなったのか?
儀式に巻き込まれたブルックリンの運命は?
全ての答えがじっと2人の来訪を待ち続けていた。

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