デメリアの門 3
「どうするもこうするも。何の目的もなく移動するなど愚の骨頂でしょう?
まずは情報収集して、これからの行動指針を決めるべきなのでは?」
赤目のアクセリの言葉に青目のブルックリンが真っ先に回答する。
すると金目のガルトが異議を唱える。
「いやいや、情報も大事だけど先立つものがないと旅どころではないでしょう?
まずは旅費を確保する方法を探すべきです」
「ガルト。確かにお金は大事だ。でもそれを稼ぐためにも情報が必要じゃないのかな?
楽して大金を稼ぐ方法なんてない以上、十分注意しておかないと」
「何を甘いことを言ってるんだ、ブルックリン。
旅が始まったばかりとは言え、ボクたちの懐はそんなにあったかいわけじゃないんだぞ?
余裕があるうちに稼いでおかないと」
金と情報。それはどちらも旅をするうえで必要不可欠なもの。
それだけに2人とも譲ろうとする気配がまるでない。
今はまだ紳士的にふるまっているが、それがケンカに発展するのはそう遠い話ではないだろう。
旅が始まった早々、先が思いやられる。
アクセリは2人に気づかれないよう、小さく嘆息した。
ここで彼が間に入って仲裁することはできる。
しかしこれは彼ら3人が1人前となるための修行の旅だ。
何でもかんでも3人で力を合わせて、なんてやっていてはいつまでたっても成長できないだろう。
だからアクセリはこう提案した。
「2人とも譲れないものがあるのはわかった。それじゃあ両方取りと行こうじゃないか。
今日から各人、この村で好きなように行動し、夕方になったらその成果を話し合う。
もっとも成果を出したものをリーダーとして付き従うもよし。
我が道を選んで進むもよし。それぞれ自分の目標が決まるまで、そうしようじゃないか」
ブルックリンは早速ベルトルトを尾行する事にした。
ベテランの冒険者らしき彼の行動は参考になりそうに思えるし、パワーファイターな彼がこの村に来た理由を知りたかったからだ。
強いモンスターでも出るのだろうか?もしそうなら迂闊な動きは出来ない…とブルックリンは不安になってくる。
肉を食い終えたベルトルトは、どっしりとした足取りで村の広場へと歩んでいく。
「待たせたな」
「いま来たところよ。」
ベルトルトは、4人の冒険者風の男女と会っていた。
答えたのは魔術師らしい若い女。
黒く艶やかな髪を伸ばして三角帽をのせている。
他には神官らしい女と、抜け目のなさそうな盗賊だろう痩せぎすの男に、薬袋を背負った若い娘。
「じゃ、行こうぜ。奴らの居場所を掴んだ。」
盗賊らしき男が言った。
彼等のやり取りと隙の無いメンバー構成にブルックリンは金の臭いを感じた。
盗賊の男が偵察担当らしいのも願ってもない幸運だった。彼に話を聞けたらぐっと楽になる。
彼等が行動を開始する。町外れの神殿を目指しているようだった。