デメリアの門 12
バッシャアアァァァンッ!!
何者かに連れ去れた3人は、次の瞬間宙に放り出されていた。
わけもわからずに悲鳴を上げるアクサリとガルト(+α)の落ちた先には。
ぷにょんっ♪
「おかえりなさーい♪一度解放したのに強引に連れ戻しちゃってごめんなさいねー?
ちょっと言い忘れたことがあったの思い出してー・・・って、あら?」
この世のものとは思えぬ、美女の豊満な胸の中だった。
どうやら彼女、ブルックリンに用があってあんなことをしたらしい。
で、たまたま近くにいた2人が巻き添えを食ったと。
まったく迷惑この上ないことだが、美女の胸にうずもれているのだ、プラマイゼロと言ったところだろう。
・・・まぁ胸に埋もれてまわりが見れず、ジタバタしている2人はその幸福を実感できていないようだが。
ブルックリン以外の思わぬ珍客に気づいた謎の美女は、きょとんとした顔で暴れる2人を見下ろす。
そこでようやく乳の海から脱出した2人が美女と視線を合わせる。
その次の瞬間!
「キャーーーーーーッ♪
ブルックリンちゃんを呼んだつもりだったのに、こぉんなかわいいコたちが2人もついてくるなんてぇーーーッ♪」
「「ぅおぶッ!?」」
感極まった美女の熱い抱擁に、アクサリたちは再び乳の海に沈む。
そのままいっそおぼれ死んでしまえと思わなくもないが、それでは話は進まない。
そんな天の意思を読み取ったかのように、美女の背後からクールな声がかかる。
「ベルレス様。お喜びのところたいへん申し訳ありません。
早く解放して差し上げねば、3人ともそのまま窒息死してしまいますよ?」
「え?ああっ!?」
「「「・・・・・・」」」
「ご、ごめんなさいっ!?私ったらまたうれしくってつい・・・!
すぐにベッドを用意するからっ!?死んじゃダメよー!?」
美女は気絶した3人を背後に控えてメイドたちに預けると、何を思ったか虚空に手をかざす。
すると白い水で満たされていたはずの泉は霧のように消える。
いや泉だけではない。周囲の風景が一瞬で切り替わり、屋外からベッドのある室内へと転換された。
そして何事もなかったかのように出現したベッドに寝かせるメイドたち。
いったいこれは何がどうなっているのか?
その答えは彼女に声をかけたメイドの言葉の中にある。
ベルレス。それはかつて子宝の神にしていにしえの邪神と恐れられた超上の存在の名前であった。
「・・・んんっ・・・あぁ?」
「・・・おい!これはいったいどういうことだ!?
解放されたと思ったら何でまだおまえの領域にいて、しかもアクサリとガルドまで来てるんだよっ!?」
「ごめんなさいね、ブルックリンちゃん。こっちの手違いで2人まで連れてきちゃったのよ」
「ちゃんづけすんなっ!?それにホントに手違いなのか!?
おまえのことだから手違いにかこつけて連れて来たんじゃ・・・!?」
「ち・・・違うわ、ホントに間違えたのよ〜!
ねえ、あなたたちも黙ってないでフォローしてよぉ〜!」
「いえ、お母様。お母様のことをご存じであれば、ブルックリン様のお怒りもごもっともかと・・・」
「そんなぁぁぁ〜〜〜っ!?」
アクサリたちが目を覚まして最初に見たものは。
どこぞの城や宮殿を思わせる、豪華な造りの天蓋と天井。
聞こえてきたものは聞き覚えのある若い男と知らない女の声。
少し身体を起こして声のするほうに目をやれば。
そこには出入り口らしきドアのある壁に整然と並ぶメイドたち。
そして自分たちのすぐそばで言い争い・・・いいや一方的に見知らぬ美女を怒鳴りつける、ブルックリンの姿があった。
探し人の姿を見て、急速に意識を覚醒させた2人は、思わず声をそろえて彼の名前を呼んだ。
「「・・・ブルックリン!?」」
「え・・・?あ、アクサリ、ガルド!目が覚めたのか!?」