PiPi's World 投稿小説

聖剣物語
官能リレー小説 - ファンタジー系

の最初へ
 112
 114
の最後へ

聖剣物語 114

バンは改めて女達の顔を見た。今までの物とは違う涙が込み上げ来る。自分は何と得難い仲間達に恵まれた事か…

…が、その時、あらぬ方向から声がした。
「悪いがそんな悠長に待っておる時間は無いのじゃ…」
「「「…っ!?」」」
皆は一斉に声のした方に目をやる。そこには占い師風のローブを身にまとった一人の美女が立っていた。
「あ…」
「あなたは…!」
「カランの街で会った…!」
バン、メリサリム、シスカの三人はその美女に見覚えがあった。バンに至っては二回会っている。一度目は闘技場の街カランで…二度目は聖都ルーシェアで…いずれも聖剣に関するヒントをくれた。
「え…誰?」
「さあ…」
いまいち要領を得ないアレイダとアイラは不思議そうに首を傾げる。
「な…なぜ貴女がこの城に居る?ここは王城…失礼かも知れんが一介の占い師が簡単に入って来られるような場所ではないはずだ!」
「ふふふ…さて、何故じゃろうのう?」
シスカの問いを微笑んではぐらかす女占い師。
その視線の先にはバンの聖剣があった。
「ま…まさか…!」
「え…イデッ!!?」
メリサリムはふと何かに気付き、抱いていたバンを放り出して立ち上がった。
いきなり投げ捨てられたバンは受け身も取れず、床に頭を打って悶絶する。
「ぐおぉぉ…!!?」
メリサリムはそんなバンに構いもせず、女占い師の前に平伏して深々と頭を下げた。
「やはりあなたは…いえ、あなた様は…!あぁ…!何という事…!あなた様は最初から私達のお側で全てを見ていらっしゃったのですね!?」
「メリサリム…?」
「おいおい、私達さっぱり話が見えないんだけど…」
「一人で納得してないで説明してくれないかしら?」
シスカ、アレイダ、アイラの三人はメリサリムに言った。メリサリムは厳かに告げる。
「皆さん!このお方こそ今から5000年前に邪神アザトゥスとの戦いで命を落とされた三人の巫女の一人…そしてダモクレスの聖剣の精霊…ヘレネ様であらせられます!」
「えええぇぇぇぇぇぇっ!!!?」
「なんだ、そうだったのかい」
「あら良かったじゃないバン、あんたやっぱり聖剣の勇者だったみたいよ」
三人は三者三様の反応をした。
「ふむ…バレてしまっては仕方が無いのう」
…と言うが早いか、聖剣の精霊ヘレネは占い師のローブをバッと脱ぎ捨てた。
ローブの下から現れたのは美しい黒髪と神秘的な紫色の瞳を持つ絶世の美女であった。
首から下に目をやると、まず目に付くのはその豊かな胸の膨らみ、そして細くくびれた腰、さらには大きく張り出した形の良いお尻に長い脚…
そんな美しくも淫らな肢体を踊り娘のような露出度の高い衣装に包んでいる。
「半裸じゃないか。それは古代の服装なのかい?」
同じくらい露出度の高いビキニ鎧に身を包んだアレイダが訊いた。ヘレネは答える。
「いいや、私の趣味じゃ」
一方、普段であればこんな美女を目にしたら放っておかないバンはというと…
「やっぱりあんたが聖剣の精霊だったのかぁ…薄々そうじゃねえかと思ってたんだ…」
バンは痛む頭をさすりながら力無く呟くのみ…やはり彼はおかしい。
「ふむ、薄々感づいていたか、どうやら脳味噌まで筋肉で出来ている訳では無いようじゃの」
そう言うとヘレネは、小馬鹿にしたような笑みを浮かべる。
(聖剣の精霊という割りに口の悪い女だ・・・)
「で?その聖剣の精霊が今頃何の用だ?」
「うむ、他でもないバン・バッカーズよ。お主に試練を与えに来たのじゃ」
「試練?」
「うむ、聖剣の勇者バン・バッカーズよ・・・お主は今こそ知らなければならんのじゃ・・・全てを・・・」
最後の言葉を紡いだ瞬間、聖剣の精霊ヘレネの瞳には、紛れも無い哀しみの色が浮かんでいた。
「“全て”とは…?」
「この私の…聖剣の辿って来た5000年間の道のり…その全てじゃよ。お前にはその全てを見届ける義務がある。そして目覚めた時、お前は今の悩みや苦しみから解放されるじゃろう…」
そう言うとヘレネはバンに歩み寄り、右手でスッと彼の両目を覆い、何か短い呪文を唱えた。
「う…っ!?」
その途端、強烈な眠気がバンを襲った。たちまち彼はバッタリと床に倒れ込む。
「ゆ…勇者様!?」
「ヘレネ様!主殿に何をしたのですか!?」
女達は慌てた。
「安心せよ。眠らせただけじゃ。目覚めた時には全てが解決しておるじゃろう…」
ヘレネは一息おいて更に続ける。
「…私とてこのような強引な手は使いたくは無い…じゃがもう時間が無いのじゃ。この世界は今、刻一刻と滅亡に向かって突き進んでおる。あの恐ろしい邪神が復活する前に早く残り二人の勇者を探し出して合流せねば世界は滅ぶ…ゆえにバン・バッカーズにはこんな所でモタモタしておってもらっては困るのじゃよ。今のところ確認されておる聖剣の勇者はこの男一人のみ…この男は世界の希望なのじゃから…」

SNSでこの小説を紹介

ファンタジー系の他のリレー小説

こちらから小説を探す