錬金術師カノンと五聖麗 63
「あ、あたいと…その、で、デートと言うのをな…してくれ………」
耳まで赤くし、最後は蚊が鳴くような声になるフォルトルージュ。
一同は気が抜けたようにポカンとする。
「は?デート?」
「…主ハコノ前来タ行商人カラ幾ツカノ本ヲ買ッテイタノダガ……ソノ中ニ男女ガ手ヲ繋ギ街ヲ歩ク表紙ノモノガアッタナ…」
「〜ノノ、ノーク!何故お前が知っている!」
「主ノ部屋ヲ掃除シテタ時ニ少々…」
「うぅ、あ〜っ…」
「つまりフォルトは雑誌を見てデートがしたくなった、と…」
「わ、悪いかよ!あ、あたいだって神獣とはいえ生き物なんだ!好きな人とデートをしたっておかしくないだろ!」
「ああ、分かった分かった。デートぐらいしてやるからそうムキになるな」
「本当か!?してくれるのか!?ちゃ、ちゃんとアレの方も込みだぞ?」
アレの言葉に、顔を赤らめて体をもじもじさせながら答える。
コイツ、本当に神獣かよ……
「なぁ、アレってもしかしなくてもアレの事か?難しく言うなら性交渉、アダルティに言うならS○X、砕けて言うならHの事か?」
「あ、ああ」
「そうか……」
だがしかし、それを快く思っていない、否、そんな事はさせない、やらせない、やらせるか!とカノンに恋する二つの存在がいた。
「「ちょ、ちょっと(待ちなさい)(待つのですぅ〜)」」
語尾は違うが、丁度いい具合に言葉をハモらせた。
「どうして、そういう条件が出るのですか!意味が分かりません!正統な理由を求めます!」
「そうですそうですぅ〜!そんなの横暴です、異議ありですぅ〜!」
デートは千歩譲っていいとしても、あっちの方までなんてさせるかとエルフと妖精は騒ぎ立てる。
「い、いいだろ!別に……あたいだって神獣とはいえ、生き物なんだ、れ、恋愛したって可笑しくないだろ!?」
「問題大有りよ!カノンの妻(予定)である私が許しはしないわ!」
カノンは既に妻帯者らしい。結婚云々吹き飛ばして……
「おーい、俺は何時の間に結婚したんだ?」
しかし、カノンの声はアセリアに届かない。
更にヒートアップする人外3人。
「ちょっと待つのですぅ〜!今聞き捨てならない言葉がありましたぁ〜!アセリアがご主人様の妻なんて意味わからない言葉ほざくなですぅ〜!!!」
「ふん!私はカノンにちゃんと結婚してくれるって言ってくれたもの」
「待て待て、そんな事言っとらんぞ、考えるとは言ったが……って聞いてぇし……」
そんな言ったところでヒートアップ中のアセリアの耳には届かない。
(ちっ、耳が長いくせに声が届かねぇのかよ)
カノンは心の中で辛辣な言葉を吐く。
そんなカノンを尻目に人外3人の世にも奇妙な喧嘩は止まる事をしらない。