錬金術師カノンと五聖麗 53
「ぐうぅ…す〜す〜…」
「寝てるよ…たくっ、忙しい人だな…」
カノンはアセリア達に大丈夫だと手招きをする。
「スパイム!」
「ス、スパイムさ〜ん!無事ですか!?生きてますか!?」
リアとエリザがスパイムへと駆け寄った。後からアセリア、シィナ、ケティ、リクシュナ、シェリルと続く。
「安心して下さい。寝てるだけですよ…しかし、リクシュナさんだっけ?あんたは主が心配じゃねぇの?」
カノンは尋ねる。
「だって…あれ眠り薬ですもの…以前にもありましたし…」
「以前?」
「ええ…もちろん主が他人に薬を飲ましたのですが…それに主はこれしきの事でくたばるような方ではありません!」
「ははっ、そりゃ言えてるわ。殺しても死なないだろうからな、あの人…で、効き目と時間は?」
「効力はただ深い眠りにつかせるだけです。時間は…効き始めは飲んで数秒、終わりは個人差はありますが三、四日です。」
「そうか…」
カノンはしばらく考え込んだ後、口を開いた。
「アセリア、シェリル!明朝に出発するぞ!」
「えっ?どこに?」
「やれやれ、ご主人様が行く場所ならばどんなとこでもついて行くのが使い魔ですぅ。デカ乳はわかってないですぅね…」
「何よ!ただ行き先を聞いただけじゃない!」
「二人とも止めろって…行き先はフェルマー渓谷。不死鳥に会いに行く。」
「ラストエリクサーの材料ね…でも不死鳥ってほんとにそんなとこにいるのかしら?滅多に姿を現さないって言われてるし…」
「いや…あいつはあそこを気に入っている。最後に会ったのは二年前だが…まぁ、いるだろうな…」
「ラストエリクサーの材料と言えばリクシュナさん?」
「ええっとあなたは……アセリアさん…ですね。なんでしょう?」
「鱗って貰えないかしら?一枚で良いの!」
「別に良いですが…薬の材料には使えませんよ?火竜の鱗は他の素材をダメにしてしまいますから…触媒にするなら別ですけどね。」
「はぁ〜…これで材料がそろうと思ったのにぃ…」
「すみません…」
「良いのよ!謝らないで!あなたが悪いわけじゃないし…」
お互いに頭を下げ合う二人。そんな光景を見ながらカノンは先程のスパイムの暴走?について考えていた。
(あいつらを後ろから操っていた奴…スパイムさんは親父と呼んでいたが…そして暴走?…覚醒?……まぁ良い。金髪…紅眼…血…新月……!……吸血鬼かっ!!つーことはスパイムさんはハーフで……奴は吸血鬼…しかも遠隔同時操作をしたんだ。上級以上…か……)
「とにかくスパイムさんセルリアンへ運ぼう。ここで寝させとく訳にもいかないし…」