錬金術師カノンと五聖麗 52
「…誰?」
リアは声を震わし、呟く。
「オレハスパイムダヨ…オンナジクラスノ…シカシ…オマエハウマソウダ…ショジョダロ?」
「う、嘘よ!スパイムは馬鹿で…空気読めなくて…でも…でもぉ!」
「アア…ガマンモココマデダ…ロクネンモマタサレタンダカラナ…ガハハッ!」
「させるかよ!」
カノンは爆発物へと錬成した石をスパイムへ投げ付ける。
当たる直前…
「ウオォォッ!」
スパイムの唸りと共に強大な魔力を石へとぶつける。
石は粉々に砕け散る。
「なっ!」
カノンは驚きを隠せない。
魔力自体が具現化することなど通常ではありえない。カノンの記憶にはそれができる者が一人だけ存在する。
(…師匠……同レベル以上ってことか…)
「ワルイナ…オトコニハキョウミネェ…」
スパイムは大地を蹴るとカノンとの距離を一瞬で詰めた。
「やべぇ…」
「ハハッ…アバヨ!」
スパイムは剣をカノンの首へと振り下ろそうとする。
カノンの首に触れる瞬間、剣が止まった。
「グウゥゥ…デテクルナ…嫌だね…お前の思い通りに…セッカクデタンダ…カ、カノン…リアに薬を…渡したぁ…ガハハッ!ワリィナ…」
スパイムの内なる闘いをしてる間にカノンは退き、リアに話しかける。
「リアさん!スパイムさんから何か…薬みたいのもらってませんか!?」
「え?…ああ、これかしら?」
リアは懐から緑色の小瓶を取り出し、カノンに渡す。
「さっき…スパイムから貰ったのよ…俺に何かあったらって…」
「これだぁ!」
「でもどうやって飲ますの?カノンでも押されでるのに…」
アセリアが尋ねる。
「…まだまださ。本気を出せば五分ってとこだな…」
それはカノンが五分の確率で敗れるということである。
アセリアは少しでもカノンの勝率を上げようと剣を抜く。
その時、空から紅い物体が急速に近付いてきた。
「な…に?」
「ドラゴンだ…」
カノンは強化された視力でそれを捕らえた。
ぐんぐんと地表へと近付く火竜。体長は40m程か。
カノン達の前へ降り立つと、紅い髪の女性へと変わる。
「……………封!」
女性が竜言語で呪文を唱えるとスパイムへ向かって放つ。
「グウゥゥアァァ!!」
スパイムは四肢を地へ打付けられたように、大の字で倒れた。
「カノンさん、ですね?今のうちに薬を!」
「あんたは?」
「リクシュナ…リクシュナ・デルデルタ。スパイム様を主とする使い魔です。さぁ!」
「わ、わかった!」
カノンはスパイムへ駆け寄ると、その口へ小瓶から液体を流し込む。
「グオォォ…デレタノニ…アバレ…タリナ……イ…」
スパイムから大量の魔力が放出した。(カノンには魔法の素質が無いため見えないが…)
しばらく様子を見て、動かないためカノンはスパイムを覗き込む。